電車を使うとこんなにも早く
来れるなんて知らなかったから、
ビックリしたけど、筒井さんが
少しだけ眠ってくれたから良かった‥


『疲れてないか?』


「それは筒井さんです‥‥
 大丈夫ですか?」


『お前は相変わらず人のことを
 心配してばかりだな‥‥ありがとう
 大丈夫だから。』



タクシーの中で手を握られると
顔が多分真っ赤になった私を見て
また筒井さんが笑っていた。


「うわぁ‥‥素敵ですね‥」


趣のある雰囲気の日本家屋は
石畳のエントランスで出迎えられ、
竹林や、松などの香りがフワッと舞い
都会からは考えられない場所に
来てしまったと感じられる


『日本に帰って来たって感じだろ?』


「はい‥‥こんな近くにこんな
 素敵な場所があったんですね‥」


近くの竹林にもずっと続く石畳を
後で散歩してみたいな‥‥



『拓巳からの帰国祝いだ。
 あとはお前の誕生日前祝いらしい。』



えっ!?


驚いて口が思わず開いてしまう。
筒井さんの一時帰国祝いならまだしも
私の誕生日のお祝いにこんな場所を
蓮見さんが!?


もう住む世界が違いすぎて本当に
怖い‥‥しかもお返しなんて出来ない
レベルで困ってしまう


見るからに高そうな館内に
チェックインの手続きをしてくださる
筒井さんの背中を見て溜め息が出る



こんな素敵なところに2泊も無料で
泊まれるなんて絶対一生もうないはず。


さっきまでは帰ってきたら騙したことを
何か言おうって思ってたけど、これでは
何も言えない‥‥いや、
言ったら罰が当たる気がする‥‥



『チェックイン出来るまでまだ2時間
 あるから、ここのランチを食べてから
 拓巳が予約してくれたマッサージに
 行こう。‥‥どうかしたのか?』


「あ‥‥いえ。なんか豪華すぎて
 蓮見さんにお礼出来なさそうで‥」


立ち上がると、筒井さんの手が
頭に触れたのでそっと上を見上げる


楽しみたいけど、こんなに全部に
お金を払ってもらっていいのかな‥‥


『じゃあ何かお土産でも買ってやれ。
 それでアイツは喜ぶから。』


「‥そんな事でいいんですか?」


『いいよ。気持ちがあればなんでも
 嬉しいから。一緒に何か探そう。』


「はい。」


筒井さんと旅館内でランチを
食べると、久しぶりの日本食に
美味いと言って喜んでいた。
 

私もショートステイの2週間ですら
日本食が恋しかったから、半年以上と
なると相当美味しいんじゃないかな‥


食事の後、
旅館の外の竹林を散歩してから
時間を過ごした後、泊まるお部屋に
案内された。