『あーー腹減ったーー』

『だったら何か食べればいいだろ?』


だだっ広いリビングにひかれた
ラグの上で大の字で寝転がる拓巳に、
パソコンで仕事をしながら答えると、
ジタバタと足を動かし始めた


『今日は霞ちゃんがクリスマスの
 ディナー作ってくれるから、
 我慢してんの。
 なぁ、もう早めに行く?』


ガバッと起き上がり、満面の笑みで
出かける準備をし始めたので、
パソコンを閉じて煙草を取り出した


『おい、吸うならベランダ行けよ。
 うちは禁煙って知ってるだろ?』


『はいはい。』


上着を着てから寒いベランダに出ると、
微かにいい香りが下の方から
漂ってきて思わず笑った


本当にいい子なんだよな‥‥。


文句ひとつ言わずに滉一と向き合って
くれて、楽しそうにご飯作ってるから。


一時は本当にどうなることやらと
心配してたけど、なんとか丸く収まって
安心してる。


俺があの時もう少し時間をずらして
出発してたらとか、あの道を使わずに
帰ってたら井崎さんにあんな悲しい
思いをさせなかったのにって‥‥


カラカラ


『なあ‥もう行こう‥‥おっ!!
 まさかこの匂いって‥‥。
 亮、合図がきたから行くぞ!!』


『なんだよ合図って‥‥。
 滉一がまた呆れるぞ?』


『そんなの今に始まった事じゃ
 ないだろ?アイツだってもうそろそろ
 来ることなんて分かってるよ。
 亮ーー!!いこーぜーー。』


クリスマスイブに、女と過ごさず、
大学から付き合いがある友人宅で
過ごしたがるなんて本当にコイツも
変わってる。


井崎さんごめんね、
今から煩いのが行くけど早めに
連れて帰るから。


煙草を最後に吸い込んでから吐き出すと
子供みたいにワクワクして待つ拓巳の
頭を軽く叩いた。


『痛ってーな!なんだよ!!』


『いや、お前はこれからもそのまま
 変わらずにいてくれよな。
 さ、行くぞ。』


滉一と拓巳とこんなに長く
親友関係が続くと思ってなかったけど、
案外悪くないんだよな‥‥


冷蔵庫からクリスマスケーキと
玄関に用意してあった大きな花束を
持って会いにいきますか。


『亮君!!はーやーくー!!』


『うるさい!何歳なんだよお前は!』


『えっ!?年齢聞くなんて
 失礼よ!?』


『はぁ‥‥ほんと煩いヤツラだ。』



short story in Christmas night


END