立ち上がると、私の髪が乱れていたのか
おでこにそっと触れると、
空港出口の方に向かって歩き出した


えっ!?待って!!
頭がまた追いつかない‥‥



「筒井さん!どういうことですか?」


1時間ほど前に降りたばかりの
亮さんの車がある場所まで戻ってきて
しまうと、ピッと音を鳴らして
トランクを開けるとスーツケースを
そこに乗せ、私のもそこに乗せてから
助手席のドアを開けた。


『乗って。』


「筒井さん!説明してくださらないと
 分かりません‥‥」


『乗ったら話すから。』


唇を薄くして少し笑うと私を車に
乗せてくれドアを閉めると、筒井さんも
運転席に乗り込んだ



いつの間に亮さんから車の鍵を
受け取ったのだろう‥‥


ん?‥‥‥違う‥‥‥これ
‥‥‥‥‥筒井さんの車だ。


3人とも同じ車種だから気づかな
かったけど、車のキーケースが
筒井さんの物だったから今更ながら
気がついた。


エンジンをかけて運転する姿に、
ずっと会えないと思っていただけに
まだ夢を見ている気になってしまう



『フッ‥そんなに見られると
 体に穴が空きそうだな‥‥』


「あ、‥‥す、すいません‥‥
 なんかまだ信じられなくて‥‥」


そんなに見てしまっていたなんて
恥ずかしくてまた顔が熱くなってしまう


パタパタと手で顔を仰いでいたら、
赤信号で止まった途端に腕を
引き寄せられると私の唇に筒井さんが
軽くキスを落とした



『‥これで信じた?』


「ツッ‥‥‥」




コクコクと何度も頷けば、
それを見て小さく笑った筒井さんに
もう何も言えずに俯いた


海外にずっといた筒井さんからしたら、
なんともない挨拶なのかもしれないけど
その程度のことでも顔が暑くなるのは
相変わらずなんだなと再認識したのだ



『まだ8時前だな‥‥。
 お前‥とにかくあの大き過ぎる
 大量の荷物を一旦解いて
 3日分くらいの荷物にしておいで。
 ここで待ってるから。』


「え!?解くんですか!?
 3日って何処に‥‥‥それに
 蓮見さんたちはいいんですか!?」


キスされたことで聞くことすら
忘れていたら家に着いてしまい、
焦る私を他所にトランクから大きな
スーツケースを取り出した。


『はぁ‥‥フランスから戻った俺が
 洋食食べたいとでも思うのか?
 どうせならお前と美味い日本食が
 食べたいだろ?』


トクン