握っていた手を握り返されると、
昨日とは全く違う穏やかな表情を見て
車に乗り込む筒井さんを見守った



時間はかかるかもしれない‥‥


心に背負った傷や出来事は、
大きかったからこそあんなにも
筒井さんを苦しめていたのだから。


それでもツラい時はそばにいる。
そう決めたから‥‥


手を振り車が見えなくなるまで
見送ると、うーんと伸びをしてから
洗濯や部屋の掃除をし始めた。


あっ‥‥


休憩した時に目に入ったチェストの
前に立つと、引き出しをそっと
開けて箱に入れたままの指輪を取り出し
もう一度指にはめた。


素直でいられるようにとくれた
大切な指輪をまたこうして身につける
事が出来てとても嬉しい‥‥


もうすぐクリスマスだ‥‥
私も何かプレゼントしたら
迷惑だろうか‥‥


沢山貰ってばかりで、自分で作った
お世辞にも上手ではないキーケースしか
あげたことがないから、いらないと
言われるかもしれないけど、何か
選びに行こう‥‥



日曜日に、菖蒲とカフェで
待ち合わせをして筒井さんとの事を
伝えると、目に涙を浮かべて
喜んでくれた。


『あと少し遅いものなら、
 文句を言ってやるとこだった。』


顔に似合わず男勝りな菖蒲に
苦笑いが溢れてしまうけど、
心配かけてしまったから報告できて
良かったと思えたのだ



『実はさ、霞が泣いた日に、
 筒井さんから電話が来たんだ。』


えっ?


『蓮見さんの番号でかかってきたから、
 何事かと思えば相手が筒井さんで
 驚いた。霞が泣いてると思うから、
 そばにいて欲しいって‥‥。
 理由を聞いても教えてくれず
 ただそれだけをお願いされたから、
 慌てて家を飛び出したんだよね。』



筒井さんがあの日、菖蒲に
電話してたなんて知らなかった‥‥


確かに今思えば、菖蒲があのタイミングで来たことが不思議だったのに、
泣いて不安定だったのかあの時は
気付かなかった。



『はぁ‥‥結局、騎士(ナイト)は
 最後までナイトだったって事。
 納得できないけど、とりあえず
 おめでとう‥‥。』


「うん‥‥ありがとう菖蒲。」


『霞はプレゼントとかあげるの?』


「うん。まだ考え中だけど、これから
 見にいこうかなって。菖蒲も
 誰かに渡すの?」
 


『プレゼントとかじゃないんだけど、
 実はさ‥‥4人で飲んだ日に、
 杉浦君に告白されたんだよね。』


えっ!!?