優しく私を見つめる瞳も
頬を包む大きな掌も温かくて、
心臓がどんどん強く波を打つ


「筒井さん‥‥私なんかでよければ
 そばにいます‥‥どうしよう‥
 嬉しくて‥‥やっぱりこんなこと
 夢みたいです‥」


泣きながらも笑顔を向けると、
目尻に唇が触れそのまま影が
落とされるとゆっくりと唇が重なった



少し触れただけの唇がすぐに
離れると、首に手を添えられて
今度は深いキスが落とされた


人生で初めて告白した時から、
筒井さんに何度勇気を出して
突進してきたのだろう‥‥


上手くいくこともあれば、
ダメだったことも全部ぜんぶ
積み重なって今がある気がする


だから失敗もその時はツラくても、
それに勝るいい事がそれを変えてゆく



甘いキスに溺れると、
筒井さんの腕に包まれてもう一度
眠りにつき、起きた時には
昼近くになっていたことにまた
2人で笑った。



「雪溶けてしまいましたね。」


『ああ、そうだな。』


「昨日帰る時に見た雪が
 桜の花びらみたいでとても綺麗
 だったんです。」


あの時、私の手を取り、
想いを伝えてくれた立田さんに
初めて筒井さん以外の異性に心が
動きそうになった。


優しくしてくれたからこそ、
正直な思いを私も伝えたい。
傷つける事になってしまっても、
私はこの手を離せないから‥‥



『次は一緒に見れるといいな‥』



後ろから私を包み込む腕の中で、
恥ずかしさと幸せな温かさを感じ
頷くとそっと手を重ねた。



朝昼兼用のブランチを兼ねて、
簡単な食事を作り、筒井さんを
下まで見送る為に降りた。


『よぉ‥‥どういうことだ?』


「亮さん!」


ここに来るまで気付かなかったけど、
車にもたれて煙草を吸う亮さんが
私と筒井さんを見て笑った。



『亮、呼び出して悪かったな。』


大きく息を吸って煙を吐き出す
亮さんが、携帯灰皿に煙草を入れて
消すと、拳を作った手で筒井さんの
胸の辺りを軽く突いた。


『もう泣かすなよ?』


『ああ‥約束するよ。』


亮さん‥‥


私の方に視線を向けてくれると、
小さくウィンクした仕草に
思わず笑ってしまった。


『じゃあ帰るぞ。
 お前とは話さないといけないことが
 山ほどあるからな。
 井崎さん、またご飯でも行こうね。』


「はい!勿論です。」


運転席に乗り込む亮さんに手を振ると、
助手席のドアを開けた筒井さんが
心配になり手を握る


昨日タクシーに乗ったのだって
久しぶりだったのに、フラッシュバック
するんじゃないかと思ったから。


『心配するな。お前がいるから
 もう怖くないって分かったからな。』


筒井さん‥‥‥