3人の後ろに突っ立っていた私は
蓮見さんの声に耳を疑ったものの、
向こうから歩いてくる人の姿に
体が固まった


‥‥ツッ‥‥‥‥‥筒井さん‥



景色がまるでスローモーションに
なる中、ゆっくりこちらに向かって
歩いてくる彼は、私を見つけると
やっぱり笑った。



『悪いな、向こうも忙しいのに
 スケジュール組ませて。』


『ああ、別に構わない。
 向こうもGWはホリデーだから。』


『じゃ、俺たちはチェックインに
 行くからあとはよろしく。』



どうしよう‥‥‥
みんなが普通に筒井さんと話してるのに
緊張してるのか、本当なのか
分からなくて体ばかりか口も動かない


みんなが手を振り行ってしまうのに
追いかけることも出来ずにいると、
目の前に来た筒井さんが私の頬に
手を触れさせてそこをそっと撫でた



『‥‥‥お前はまた泣いて。』


泣いてる?‥‥‥私が?
そんなことにも気付けずに
頬に触れると、その手を取られて
その場で優しく抱き締められた



筒井さんの香りだ‥‥‥
本当に筒井さんだ‥‥‥


「‥‥ツッ‥‥筒井さッ‥‥筒井さん」


『フッ‥‥久しぶりに会えたのに
 笑ってくれないのか?』


こんなサプライズ嬉しすぎて
とても笑えない‥‥


約半年ぶりに感じる本物の温もりや
耳に響く声、握られた手に
瞳を閉じて寄り添う


「‥‥グス‥‥おかえりなさい」


『‥‥ただいま。
 泣いてるところ悪いが、ここは
 かなり目立つから移動するぞ。』


えっ?


「あっ!痛っ!!」

『フッ‥‥行くぞ。』


久しぶりに摘まれた鼻を押さえると
目を細めて笑った筒井さんに顔が
真っ赤になったと思う


慌ててハンカチで目元の涙を拭き、
パウダールームで軽くお化粧を
直させてもらってから気がついた


あれ?
ちょっと待って‥‥?


蓮見さんたちってチェックインに
行ってしまったよね!?


再会が信じられずに脳が今だに
目覚めなかったけど、目が覚めて
慌ててロビーの椅子に腰掛けている
筒井さんの元へ急いだ


どうしよう‥‥
モタモタしてたからみんな
もう出発してしまってたら‥‥‥


筒井さんも行く予定だったとして
2人分のキャンセル料がいる!?



「つ、筒井さん!蓮見さんたちは
 何処にいますか?」


間に合うか分からなかったけど、
間に合うなら急がないと!!


国内線は代表者がチェックインすれば
行けたはずだけど、確か国際線は
パスポートや本人確認がないとイン
出来なかったはず‥‥



『準備してきたところ悪いが、
 一旦マンションに戻るぞ。』


ん?