金曜日


着替え終わった私は、
エントランスの入り口付近で
待っていてくれた菖蒲たちの元へ
向かった。


『井崎さんお疲れ様。
 俺たちも来たところだから
 全然待ってないよ。』


「立田さんお疲れ様です。
 菖蒲も杉浦君もお疲れ様です。」


『寒いから外歩くのもツラい‥‥
 早くあったかいもの食べに行こう?』


ほんとに今日は一段と寒い‥‥
クリスマスを来週に迎える前なのに、
雪が降りそうなほど風も冷たい


「今日は何処へ行く予定なんですか?」


立田さんが予約をしてくれたと
菖蒲に聞いていたので、すごく楽しみ
だった。


菖蒲と行くところは大体いつも
決まっているから、違う人が知ってる
美味しいお店とかって特別に
ワクワクしてしまう。


『近くにあるバルにしてみた。
 そんなにオシャレなとこじゃないかも
 しれないけど味は美味しいよ。
 同期ともよく行くから。』


『へぇ‥‥俺たちも行きたいな。
 何処なの?』


えっ?


肩に重みを感じたかと思えば、
案の定やっぱり蓮見さんで、
後ろに筒井さんと古平さんもいる


『あ‥お疲れ様です。』


立田さんも突然の上司達の登場に
驚いたようで顔が少し固まっている


変なタイミングで会ってしまったけど
何も悪いことはしてないし、
ただみんなでご飯に行くだけだから
冗談言わずに去って欲しい‥‥


『霞ちゃんも行くの?』


「えっ?あ、はい‥勿論です。」


『ふーん。偶には俺たちともご飯に
 行こうよ。』


ドクン


蓮見さんがどんな顔でそれを言って
いるのかは分からないけど、菖蒲と
一瞬視線を交わす。


菖蒲だけは唯一、筒井さんとのことを
知ってくれている存在だから。



『蓮見さん、ヤボってやつですよ。
 私達4人で仲良く行くんですから。』


杉浦君と私の腕に自分の腕を絡めると、
蓮見さんの腕から引き抜いてくれ、
菖蒲の方に引き寄せられた。


菖蒲‥‥‥?


『あ、あのそれじゃ失礼します。
 井崎さんたち行こうか。』


「あ、はい。」


立田さんが蓮見さん達に頭を下げたので
私達もお辞儀をして挨拶をした。



良かった‥‥
本当についてきたらどうしようかと
思ってヒヤヒヤしてたから。



『おい、ちょっと待て。』


えっ?


エントランスを出たところで
肩を掴まれた私は、驚いて立ち止まる


「‥‥つ、筒井さん‥えっ?
 ‥どうかされましたか?」


本当はかなり動揺しているけど、
みんながいる手前、普通にしないと
いけないと思い冷静を装う。




『あまり飲みすぎるなよ?』


えっ?


なんで‥‥‥
そんなこと言いに来たんだろう?


ただの上司と部下という関係に
戻ったのに、わざわざ走って追いかけて
きて言うことじゃないのに‥‥