まさかの尋問にさっきまで
リラックスしていた体が一瞬で強張る


亮さんから何も聞いてないのかな‥


あの日荷物を持ち帰る際に、筒井さんの
そばにいられないと伝えたから、
蓮見さんも知っているものだと思った



「つ、筒井さんは‥‥お元気ですか?」


なんで答えていいか分からず、
質問を質問で返してしまう


勘のいい蓮見さんだから、きっと
言わなくてもある程度は察して
いるとは思うけど、言葉にすると
また挫けそうで言えなかったのだ



『気になる?アイツのこと‥‥』


「えっ?‥‥そ、それは勿論です。
 あんな大怪我されてちゃんと
 ご飯食べられてるかも心配ですし」


料理が出来ない筒井さんが、
片手しか使えないのに
どうしてるかなんて
気になってるに決まってる。


でも仕方ないじゃない‥‥
筒井さんが決められたことだし、
見に行くことができないのだから‥



『2人のことはさ‥正直俺が口出し
 出来ることじゃないし、自由だから
 いいんだよね。たださ、今のアイツは
 昔みたいに戻ってる気がするんだ。』


えっ?


『表面上は何にも変わらないよ。
 酒はまだ飲めないけど、集まれば
 くだらない話を夜中までするし、
 食欲だって相変わらずだから。』


そんな‥‥
昔って大学時代ってこと?


わたしが筒井さんに最後に感じた
怖いと思った表情が思い出され、
小さく首を振った。



『PTSD‥‥聞いたことある?』


PTSDって‥‥まさか‥‥


『亮とも話したけど、
 多分滉一はそれにかかってるんだと
 思ってる。』


「嘘‥‥‥そんな‥‥
 事故が‥原因ってことですか?」


心的外傷後ストレス障害‥‥


ニュースや様々な場所で聞いたことが
あるけれど、実際のところはよく
分かっていないものだ


交通事故で意識を失い、
大怪我をおったことで筒井さんの中で
かなり大きなストレスや負荷が
かかってしまったのだろうか‥‥



『アイツの家族も交通事故で
 亡くなったんだよ。』


「えっ?」


色々なことが一気に押し寄せ、
両手で口元を押さえる


筒井さんのご家族のことをつい
この間知ったばかりだけど、
交通事故ということを聞き、
全身に鳥肌が立つ


『詳しくは俺も知らないけど、昔
 一緒に飲んだ時にそう言ってたのを
 亮と聞いたことがあるんだ。
 今回の事故とそれが関わってるかは
 分からないけど、殆ど眠れてない
 状態が続いてるし、何よりアイツ
 笑わないんだよね。』


筒井さん‥‥‥