良かった‥‥


先週見た時の元気のない
筒井さんではなく、いつも通りの
筒井さんで安心してしまう



「ご飯まだですよね?
 何か食べたいものあったら教えて
 ください。作りますから。」


『ああ‥‥その前に今はこっちだ。』


えっ?


手を引かれてリビングに向かうと、
ソファにわたしを座らせたかと思うと
そのまま筒井さんが覆い被さった


「筒井さん!傷が‥んっ」



あっという間の出来事で
至近距離にあった筒井さんの顔が
近づくと、いきなり激しく深いキスを
されたことに驚く


「んっ‥‥チュ‥ン‥‥」


右手で私の肩を掴みながら
落とされるキスが苦しくて、
息までだんだん苦しくなり、
口の端から唾液が溢れ始める頃
ようやく離された唇に瞼をそっと開けた


「ハァ‥‥ハァ‥‥」


筒井‥‥さん‥‥
いきなりどうして‥‥‥


『抱かせろ‥‥』


えっ?


上から私を見下ろす顔がいつもと違って
全く笑ってない‥‥


口調だって荒々しくて
掴まれている右肩も痛くて怖い‥


筒井さんに対して怖いなんて気持ちに
なった事なんて一度もないのに、
体が自然と震えてしまう


「つ、筒井さん?
 ‥‥どうされたんですか?」


まだうっすらと傷痕が残る頬に手を
触れさせると、それすらも阻止され
また顔が近づいて来たので、
慌てて横に顔を背けた


「ちょっと待ってください!
 ‥なんか変です‥‥
 こんな風にされるなんて‥」


両手で胸の辺りをグッと押すと、
ようやく筒井さんが離れてくれた。


いつもはこういうことに慣れていない
私を大事に抱きしめながらしてくれる
行為なのに、これ以上されるのが
どうしてもツラく感じてしまったのだ




『はぁ‥‥お前やっぱり家に帰れ。』


えっ?


立ち上がった筒井さんが口にした言葉に
聞き間違えじゃないかと思いたいほど
心臓が大きく締め付けられる


「筒井さん‥‥今なんて‥」



『帰れと言った。抱きたい時に
 させてくれない相手といても
 苦痛で仕方ない‥‥。』


そんな‥‥‥‥


私が続きを拒んだから?
たったそれだけで帰れと言うの?


今日から、身の回りのお世話という
形でも一緒にそばで支えられるって
楽しみにしてきたのに、頭を鈍器で
殴られたような衝撃に体が動かない


「筒井さん‥‥」





『‥‥お前ともうこの関係を
 続けていくのはやめにしたい。
 俺の都合で悪いが、分かって
 貰えると助かる。』


ドクン