『お互いそんなにスピードは出して
 なかったものの、車は廃車。
 俺は打撲と軽いムチウチで済んだけど
 滉一は窓ガラスも割れたり強い衝撃
 で脳震盪もあって検査してから
 骨折も見られて手術することに
 なった。落ち着くまで帰れなくて
 連絡出来そうにもなくてすまない。』



『そうか‥‥はぁ‥‥後処理は
 どうにでもなるなら、とりあえず
 2人とも無事で良かったよ。
 霞ちゃん、滉一は大丈夫だから。』


「‥‥はい」


縦に首を振りながらも、事故の
話を聞いてるだけで震えは止まらず、
暫く2人に寄り添ってもらううちに
手術室の扉が開いた。


勢いよく立ち上がる2人に腕を
引っ張られて立たせてもらうと、
真っ白なベッドに寝かされている
人物が少しずつ見え、私達の前で
止まった。



「つ‥‥筒井さ‥‥‥」


頭と左目を包帯で巻かれ、
左肩からギブスで手首まで固定された
痛々しい姿にまた涙が溢れた


『ご家族代理の方ですか?』


『はい、本人の両親は他界して 
 ますので、俺たちが聞きます。』


えっ?


筒井さんのご両親はいないの?


そんな話すらしたこともなかったし、
当たり前にいるものだと思っていたから
亮さんの言葉に驚いて見上げた


『執刀医の矢次です。
 脳には異常はないものの、
 ガラスで切れた部分を縫合しました。
 左上腕にヒビが2箇所、
 左肘頭骨折の部分にはプレートとビス
 で固定をしてありますが、リハビリを
 行えば早く回復が見込めます。
 左側は打撲が酷いので暫くは
 動くのもツラいと思いますので、
 入院が必要になりますので、案内を
 病室にて看護師から
 させていただきます。』



難しい言葉は分からないことが
多く、麻酔が効いているのかまだ
眠っている筒井さんの右手を握った


あったかい‥‥
ちゃんと生きてる‥‥‥


痛々しい姿を見るのはツラいけど、
話を聞く限り恐ろしい事故なのに、
生きていてくれただけでも良かったと
心から思った。



ご両親が見えないことは、
聞かなかったことにしよう‥‥


いつか筒井さんからそういう話が
出た時にちゃんと聞きたいから。


動き出したベッドに、握っていた手が
離れると、隣にいた蓮見さんが
両肩を支えてくれた。


『とりあえず大丈夫そうだな‥‥。
 話が終わったら亮も一緒に乗せて
 家まで送る。
 また明日ゆっくり来よう。入院の
 荷物も持ってこないと
 いけないしな。』


「はい‥‥蓮見さん
 ありがとうございます。」