家に帰った私は、
ポケットから筒井さんのハンカチを
取り出してギュッと抱き締めた


筒井さんがそばにいなくても昨日
声が聞けたから頑張れました‥‥



スマホに保存してある写真の中から
筒井さんと湖で撮った写真を見て、
やっぱり私はこの恋をまだ終わらせたくないって思う



心配だから気にかけて偶々連絡して
くださっただけかもしれない


それでも、愛しい人の声を聞けて
涙が出たり胸が苦しくなったり
出来るこの気持ちに正直でいたい。



それから間も無くして花野さんの
退社が決定し、書類を届けに来た際、
佐藤さんにも謝罪をしてから
エントランスを出ていく彼女を
2人で見送った。



GW明けに総務課の受付への希望が
新社会人の子たちになければ、
このまま佐藤さんと2人のまま
また暫くは行く予定になる


『努力しても報われないこともある。
 落ち込んでても仕方ないから、
 花野さんのことは残念だし、
 やっぱりしたことは許せることでは
 ないけど、あの子が前を向けるように
 ここで見守るしかないのよ。』



「そうですね‥‥。」


一生懸命指導してた分、たったの10日
の勤務で終わる選択をさせてしまったと
佐藤さんは落ち込んでいた。


小さな嘘は、時には取り返しの
つかないことになるということを
花野さんが学んでこれからを
生きてくれるといいな‥‥



『仕事が終わったらご飯に行こう』



あれから早いもので忙しい日々を
過ごしているとあっという間に
明日からのGWの大型連休を
迎える日になってしまっていた。



お昼休憩を終えてエレベーターを
待っていた所に蓮見さんが来て、
亮さんと3人で久しぶりに会おうと
いうことになったのだ。


「こんばんは。お疲れ様です。」


18時に
いつものイタリアンダイニングに
向かうと、亮さんが既に来ていたので
蓮見さんと席に向かった



『井崎さんお疲れ様。拓巳は‥‥まぁ
 昨日も会ったから別にいいか。』


『なんだよ!その対応の差は!!
 仕方ないだろ?家が近いんだから。』



ふふ‥‥
筒井さんはいないものの、この
やり取りを見るのは相変わらず楽しい


3人で乾杯をしてから美味しい前菜を
食べると、仕事が終わったという気に
なれて嬉しくなる


『今年のGWは井崎さんはもう
 予定入れちゃった?』


「はい。4月は実家に帰ったり、大学の
 友達と会ったりはする予定です。」


今年は11連休と、
間に平日を挟むものの、企業がお休み
のため久しぶりの大型連休なのだ


忙しくて掃除とかも出来てないから、
天気が良ければ色々やりたい。