そこを選んだ理由はそれだけじゃなくて、あんまり同じ高校の人に見られないと思ったからってのもあるんだけどね。


さっきみたいなことが起きると私の立場が危うい。


糸瀬くんファンの女子多いもんね。


そんなことも知らない糸瀬くんは笑って


「じゃ、そこで。」


と言った。


笑ったことで糸瀬くんの涙袋がぷっくりと浮き上がる。


ほんと綺麗な顔立ち。


「なんてとこ?お前についてくと迷いそう。」


糸瀬くんは私をからかってポケットからスマホを取り出して地図アプリを開いた。


もう検索欄に場所を入れる準備をしている。


「バカにしてるでしょ、ちゃんといけるし!」


確かに私は方向音痴ではあると思う。


知らない土地だとすぐ迷う。


けど、そのカフェはあくまで近所だしこないだ行ったからちゃんと行ける。


なんか糸瀬くん、私のこと何かとバカにしてきがち。


「ほんとかよ。」


彼はケラケラと笑い道案内を私に委ねた。