「…の!あの!」


「へっ!」



花火に夢中になっていた私は、急に聞こえてきた声に驚いた。


振り向くと、彼がいた。


さっきは遠かったし暗かったからよく顔が見えなかったけど、花火の音に負けないように少し顔を近づけている彼はかなり整った顔立ちで、ドキッとした。



「あれって、どこかのお祭りかなにか?」


「え?」


「あ、俺最近この近くに引っ越してきたんだ。」


「あ、そういうこと。あれは隣町の花火大会です。」


「へー。今日花火大会だったんだ。」



花火を見に来たのだと思っていたけど、違ったらしい。



「どうしてこんなところにいたんですか?」


「ん?夜空が綺麗に見えるから。夜になるとここに来たくなるんだよね。」



そう言った彼は、少し寂しそうに見えた。


パン!パン!


花火はまだ上がっている。


花火を見る彼の横顔が儚くて、美しくて、目が離せなかった。