「大丈夫だよ。俺、唯ちゃんのこと好きなままだから。ちょーっと駆け引きしてみただけ」



「あ・・・ぅ・・・」



そう言って、そっぽを向く唯ちゃんの頬に手を添える。



その瞬間、俺の方を見つめて口をパクパクさせている。



「あー・・・戸惑ってる唯ちゃん可愛いな・・・。やっぱ、駆け引きはもうやめにしよ。こんな姿見たら好きって言いたくなっちゃうし」



愛おしく思いながら、唯ちゃんの頬を撫でる。



それだけなのに、唯ちゃんは緊張してるのか体に力がはいっている。



「っ・・・ご、強引なのは嫌いです・・・」



「嫌い?好きの間違いじゃなくて?」



「き、嫌いです・・・。だって、抵抗出来ないんですもん・・・」



視線を泳がせたと思ったら、うつむいてポツポツと呟く唯ちゃん。



抵抗出来ないって・・・前はあんなに力いっぱい抵抗してたくせに。



「唯ちゃんなら出来るはずだよ。それでも抵抗しないってことは・・・俺の事が好きだからじゃない?」



唯ちゃんは力が強い。



俺の事意識する前は全力で抵抗してたし、出来ないわけは無い。



それでも抵抗しないってことは・・・そういうことだよね。



「っ・・・ち、違う・・・!!そんなんじゃ・・・!」



「違うの?じゃあ振り払ってごらん。俺、そんなに力入れてないから振り払えるよ?」



唯ちゃんの手首を掴み、壁際に追いやる。



トン・・・と唯ちゃんの背中と手首を壁に押し付けた。



「っ・・・振り・・・払えません・・・」



「・・・ふふっ、そっか。じゃあ、俺の好きにさせてもらおーっと」



そう言って、少しずつ唯ちゃんに近寄っていく。



もう少しでキスしてしまいそうな距離まで近付くと、唯ちゃんは目を閉じた。



目まで閉じちゃって・・・キスされるの待ってるじゃん。



あー、もう・・・可愛い。



少しの間、間近で唯ちゃんのことを見つめていると、恐る恐る目を開ける。



「っ・・・」



「目まで閉じちゃって・・・そんなにキスして欲しかった?欲しがりだなぁ」



「ッ・・・いっ、今のはっ・・・!っ・・・!?」



何かを言いたそうにしていた唯ちゃんに対して、優しくキスを落とす。



突然のことに驚いたのか、唯ちゃんは目を丸くしていた。



「キス、して欲しかったんでしょ?」



「っ・・・そ、そんなこと・・・」



うつむいて恥ずかしそうにしている唯ちゃんに愛しさが爆発しそうになる。



そんな反応されると、もっとしたくなっちゃうな。



「あぁ・・・可愛い。・・・ねぇ、唯ちゃん、好きだよ」



「わ、分かりましたから・・・離れてください」



そう言って、弱々しい力で俺の胸を押す唯ちゃん。



前までならもっと強い力で押すはずなのに・・・可愛くなっちゃって。



「んー・・・やだ。唯ちゃんだって、離れたくないでしょ?」



甘えるように唯ちゃんに言うと、うつむいて視線を泳がせている。



そして、意を決したように口を開いた。



「・・・心臓が持たないので・・・離れたいです・・・」



「なに?俺が近くてドキドキしちゃった?」



「・・・はい。だから、離れてください」



俺の言葉に素直に答える唯ちゃんは、俺の胸を押す。



でも、さっきと力は変わっていない。



退かすつもりのないような力に、思わず笑ってしまう。



「んー・・・俺的には照れてる唯ちゃんのこともっと見たいけど・・・唯ちゃんが限界みたいだし・・・やめとこうかな」



名残惜しい気持ちになりつつも唯ちゃんの手を離し、ゆっくりと唯ちゃんから距離をとる。



すると、解放された手で胸元を押さえだした唯ちゃん。



キーンコーンカーンコーン・・・



その時、予鈴のチャイムが鳴り響いた。



「あ、時間だね。教室に戻りな。俺も移動するから」



そう言って唯ちゃんと移動教室先へと向かう。



後ろを振り返ると、唯ちゃんは頬を押さえてしゃがみこんでいた。



・・・ちょっと、やりすぎちゃった・・・かな?