唯ちゃんに告白をしてから、しばらく経った。
だけど、唯ちゃんは俺がアプローチをした時は反応するけど、それ以外の時は無反応だった。
・・・ちょっとだけ、駆け引きしてみようかな。
そう考えた俺は、今までグイグイいってたのを控えてみることにした。
唯ちゃんに声をかけられても素っ気なく接し、必要以上にベタベタしない。
遠い所から話しかけられたら、わざと無視してやり過ごしてみた。
唯ちゃんは目に見えて戸惑っているようだった。
やっぱり、駆け引きしてみて正解だったかな?
そんなことを考えながら、しばらく同じようなことを続けていた。
そんな中、移動教室中に唯ちゃんが前から歩いて来るのが見えた。
だけど・・・どこか元気が無さそうだ。
「・・・あの、山崎先輩」
「やぁ、唯ちゃん。俺、移動教室だからまたね」
素っ気なく返事をして、そのまま廊下を曲がって先に進もうとする。
「っ・・・!!山崎先輩」
「!!ゆ、唯ちゃん?」
すると、俺の名前を叫びながら唯ちゃんに後ろから両手で俺の手を掴む。
後ろを振り返って見ると、うつむいたまま俺の手を離そうとしない。
唯ちゃんから触れてくるのって、お化け屋敷以来だな。
「あのっ・・・どうして最近、私の事避けてるんですか?」
「・・・」
うつむいたままだから表情はわからないけど、俺の手を掴む手にキュッと力を込めた唯ちゃん。
そして、俺の顔を見つめてきた。
「あの・・・毎日好き好き言ってた人が急に来なくなると、不安になるんです。私にキョーミ無くなったんですか?」
両手で手を掴み、上目遣いで俺の事を見つめる唯ちゃん。
その瞳は少しだけ潤んでいるように見えた。
「・・・それ、どこで覚えたの?可愛すぎて卒倒しそうなんだけど」
「・・・え?」
俺の言葉にハテナを浮かべる唯ちゃん。
そりゃそうだろう、急にこんなこと言われちゃハテナも浮かぶってもんだ。
「ほら、よく言うじゃない?押してダメなら引いてみろってさ。それを実行しただけだよ。・・・唯ちゃんには、効果てきめんだったみたいだね。俺が何も言ってこなくなったから心配になっちゃったんだ?」
「っ・・・べ、別に!」
俺の手を離して、そっぽを向く唯ちゃん。
だけど、どこか安心したような表情を浮かべていた。