「あれ?どうしたの?コピー、してくるんじゃなかったっけ?」
「・・・コピー機・・・使用中止って書いてありました・・・」
「へぇ・・・」
黙ったままうつむき、ボソボソと喋る唯ちゃん。
嘘だな、原本忘れてったからでしょ?
・・・わかりやすいなぁ。
「じゃあ仕方ないね。残りやっちゃおうか。足りないのは1枚残して使えるようになったらコピーしよ」
「!・・・ハイ」
少しほっとしたような表情を浮かべて席に座る唯ちゃん。
本当、わかりやすい。
前に勘違いされやすいって言ってたけど、こんなにすぐ表情に出るのに勘違いされるんだ。
そんなことを考えている時、廊下から話し声が聞こえてくる。
「ねぇ、あれ真白じゃない?」
「ほんとだ。しかもイケメンな人と一緒にいるよ」
「うっわ・・・キョーミないとか言っといてちゃっかり色目使ってんじゃない。本当、癪に障る女」
中にいる俺達にも丸聞こえな会話。
隣にいる唯ちゃんにも完全に聞こえてるみたい。
スカートの上に手を置き、キュッと握りしめていた。
あぁ・・・この人達が“勘違いしてくる奴ら”か。
そう思った時、咄嗟に近くにあったルーズリーフに文字を書き始める。
「・・・ねぇ、唯ちゃん。いつになったら俺と付き合ってくれんの〜?」
「っ!?は──・・・!?なにっ・・・!!」
驚いている唯ちゃんに今書いた文字を見せ、下の方に書いた“これ読んで”という文字を指差した。
「・・・“全く、何回言わせれは気が済むんですか。私、そーゆーのにキョーミありません。そんなことより手を動かしてください。放課後居残りになりますよ”・・・というか、本気で思ってもない事言うのやめてください。他に好きな人いるんでしょう」
「!」
俺の提示した言葉じゃない事を言われ、少しピクッと反応する。
なんで他に好きな人がいるってことになるんだ?
俺が好きなの、唯ちゃんなのに。
「・・・なぁんだ、いつも通りじゃん」
「しかもあのイケメンな人、好きな人いるんだって。別に色目使ってないじゃん」
「・・・そーね」
廊下にいた3人組は、そう言ってどこかに行った。
良かった・・・ようやく理解してくれた・・・。