真白side



先週の土曜、山崎先輩とお出かけをした。



お化け屋敷に入ることになって、ずっとしがみついてしまっていたことを謝った時──



“なんでって・・・そんなの、好きな子に触れたいって思ってるからだよ”



その時言われた事が頭の中をグルグルとしていた。



アプローチしてるとも言ってたし・・・もしかして先輩、私の事・・・?



そんなことを考えては恥ずかしくなってジタバタしてを繰り返していた。



一花やお母さんに相談しても、“受け入れればいいじゃない!”と言って聞く耳を持ってくれない。



困ったな・・・そう考えていた時、とある先輩が頭に浮かんだ。



同じ中学で同じバレー部の三島 由紀先輩だ。



確か、恋愛相談に乗ってくれるって噂になってたよね。



高校も同じだし、ちょっと相談してみようかな。



そう考えて3年生のクラスに行き、由紀先輩のことを探す。



「あれ、唯じゃない。どうしたのよ、こんな所で」



「あっ、由紀先輩!」



探していた由紀先輩が目の前に現れ、思わずしがみつく。



「ど、どうしたのよ。急に」



「あ、あの・・・相談があるんですけど・・・!」



それから、私はとある先輩に迫られているということを話した。



「はぁ?委員会の先輩から迫られてる?」



「はい・・・由紀先輩なら対処法知ってるかなって」



「まぁ・・・“マドンナ”って言われてた時期もあったし、対処法ぐらい教えられるけど?」



そう言って、顎に手を当てて考え始める由紀先輩。



「じゃあ教えてください。正直困ってるんです」



藁にもすがる思いで由紀先輩に懇願する。



だけど、由紀先輩はうーんと考えたあと口を開いた。



「・・・その困ってるって、嫌で困ってんの?それとも、嫌じゃないから困ってんの?」



「!!え、えっと・・・」



まさかそんな事を聞かれるとは思ってなくて、挙動不審になる。



嫌で困ってる訳じゃない。



むしろ、嫌じゃないから困ってるって言った方が正しいだろう。



「すぐに答えられない所を見ると後者ね。アンタ、昔っからそういうのに免疫ないもんね」



「まぁ・・・否定はしませんけど・・・」



口篭りながら答えると、ふぅん、と言いたそうな表情を浮かべる由紀先輩。



中学の時と比べて少し柔らかさが消えたように感じるけど・・・でも、優しさが消えた訳じゃなさそうだ。



「で?誰よ。アンタの純情を掻き乱しまくってる奴は」



「先輩と同じクラスの山崎 優先輩です」



腕を組みながら私を見つめてくる由紀先輩に素直に答える。



すると、少し驚くような表情を見せた。



「は、山崎?アイツ、茉弘のこと好きなんじゃないの?」



「・・・え」



ガツンと頭をぶん殴られたみたいな衝撃が、私の中で起こった。



山崎先輩って・・・好きな人いたの?



「知らない?辻本 茉弘。去年の文化祭で公開告白した奴なんだけど・・・なんか、雰囲気がアンタに似てんのよ」



「・・・そうですか・・・」



「まさか、茉弘から乗り換えてたとはね。そうそう、対処法なんだけど──」



由紀先輩が対処法を話してくれている時、私はさっきの言葉で動揺していた。



山崎先輩、辻本 茉弘さんが好きだったんだ・・・それなのに、なんで私に・・・?



「おーい、由紀ー。先生呼んでるー」



そう考えている時、ショートヘアーの元気そうな先輩が由紀先輩目掛けて走りよってくる。



「茉弘・・・。アンタ、そんな格好で来たわけ?ちゃんとネクタイぐらい締めなさいよ」



由紀先輩が駆け寄ってきた先輩と話してるのを呆然と見つめる。



この人が辻本茉弘さん・・・なんか、私にそっくり・・・。



もしかして・・・この人に振られたから、似てる私にアプローチしてるってこと・・・?



「唯、ごめん。呼ばれたからまた今度教えるわ」



そう言ってその場を立ち去る由紀先輩。



辻本茉弘さんと取り残された私は、思わず彼女を見つめてしまう。



「・・・あの、辻本さん」



「ん?なに?」



「・・・いえ、失礼します」



「?うん、またね」



思わず辻本茉弘さんに声をかけてしまうけど、すぐにその場を去ろうとする。



手を振る辻本茉弘さんを見つめた。



私が髪切ったらこんな感じになる。



それに、声も似てる・・・気がしなくもない。



「・・・あの人の・・・変わり・・・なのかな・・・」



なんだろう・・・すごく・・・すごく、モヤモヤする・・・。