ゲニーが作った解呪魔法かけてもらったヴァールは体が思うように動かせるようになった。

「お父様、ありがとうございます。今回はすみませんでした……。僕が安易に令嬢たちからの手紙を受け取らなければ、このような事にはならなかったのに」

 ヴァールは自責の念に駆られ、落ち込んだ様子でゲニーに話す。

「いや、お前は悪くない。そもそも誰からも物を渡されたりを出来なくさせるというのは、学園生活がなりたたないだろうし、学園だけではなく他のところでも無理だろう。それより、呪術魔法や傀儡魔法など危険な魔法をかけられないようにする為にはどうすればいいかを考えなきゃいけない」
「そうだな。だが、そんなことは可能か?」

 ゲニーが謝罪するヴァールに非は無いと言い、ヴァイスハイトは対呪術魔法などの回避方法があるか弟に問うた。

「……ない訳ではない。限界はあるが、かけられるであろうとされる魔法が効かなくなるよう先回りして魔法をかけておく事は出来る。確かに限界はあるが、かけないよりマシだ」

 その日からゲニーは公務をしながら呪術魔法や傀儡魔法などかけられると大変なことになる魔法を予防する魔法を作り出すことになったのだ。

「ゲニー、最近全然寝てないよ? ただえさえ睡眠時間少ないのに私とエッチする時間取らない方がいいんじゃないかな? その時間睡眠に回そ?」
「え〜、無理。君とのエッチがないと毎日の癒しがないから却下」

 ゲニーは体調を心配する妻の提案を断る。それから半年かけて分かる範囲危険な魔法に対抗するべき予防魔法を作り出し、王族である家族にかけた。一般向けに公開したかったが、見た魔法陣から魔法を模倣してかけたり、改良したりすることが出来るので、公開はしないことにする。

「これで今現在把握されてる範囲の魔法は防御できるぞ」
「お父様、ありがとうございます。これで学園生活を心から楽しめます」

 ヴァールは寝る間も惜しんで魔法を作ってくれたゲニーに感謝した。



「ヴァール兄様……。今夜兄様の部屋に行っていいですか?」
「ツェスィー、どうしたの?」
「ちょっと話がありまして」
「お父様たちには内緒で来てね。僕殺されちゃうかもしれないから。一応シャイネンを護衛につけてね」

 ヴァールはあははと笑うが、あながち嘘ではないと思っていた。

 そしてその日の夜、皆が寝静まった頃プリンツェッスィンはヴァールの部屋に訪ねてくる。

 ヴァールの部屋に入ったプリンツェッスィンは、込み入った話があるから寝室へ入りたいと言った。従兄の寝室に入ったプリンツェッスィンはベットの上に腰掛ける。それを見たヴァールも従妹の隣に腰かけた。

 護衛のグレンツェンとシャイネンはヴァールの部屋のリビングルーム兼書斎に控えており、奥の寝室には従兄とプリンツェッスィンの二人きりである。

「兄様!!」

 ヴァールの肩に手をかけたプリンツェッスィンはガバッと従兄を押し倒し、馬乗りになった。

「兄様の初めて貰っていいですか?」
「え?!」

 いきなり可愛い従妹に馬乗りにされ、ヴァールは狼狽える。

「え!! もしや初めてではないのですか?!」

 今度はプリンツェッスィンが驚き青ざめた。

「いや……初めてって……。つまり、そういうことだよね?」
「はい。兄様の筆下ろしをさせてください」

 プリンツェッスィンが筆下ろしという言葉を知ってることも驚きなのに、性交の仕方まで分かってるのがヴァールにはやはりショックである。

「私も生理が始まり、ちゃんと閨教育も受けてます。どうしたら殿方が気持ち良くなるのかくらいは分かってますよ?」
「いつから分かってたの?」

 何となくいつからか知りたかったヴァールはプリンツェッスィンに問うた。

「そうですね。ツェスィーは初潮が来たのに合わせて性教育含めの閨教育も始まりました。ツェスィーが十歳のときです」
「思ったより前だね……」
「そうですか? ヴァール兄様はツェスィーのこと子供扱いし過ぎです! ツェスィーも立派な女の人ですよ?」

 十一歳のプリンツェッスィンの外見は六、七歳にしか見えない。体の発育の割に早い初潮にヴァールは驚いた。

「ヴァールお兄様は、ツェスィーとするの嫌ですか?」

 プリンツェッスィンは目を潤ませヴァールを見つめる。

「嫌なわけないよ! 寧ろ、ツェスィー以外嫌だよ! 考えたくもない!」

 ヴァールは直情のままをを吐露した。

「なら……いいですよね? ツェスィーも初めてですが、精一杯励みたいと思います」
「いや……ダメだよ。王族は婚前交渉が禁止だ。僕は証拠が残らないようにできるけど、ツェスィーは無理だから……」

 ヴァールは愛しい女性からの思ってもいなかった嬉しい誘いを断腸の思いで断る。

「破瓜の血が出ない女性(ひと)も中にはいます!」
「それでもダメだよ。何かしら魔法を使って処女かどうか調べられたら分かってしまう」
「分かったら何なんですか?! ツェスィーは兄様に嫁ぐんです! 何が問題あるのでしょうか?! ツェスィーは以前の事件のことのように兄様が誰かに取られてしまう方が嫌なんです!」

 プリンツェッスィンの瞳から大粒の涙がポロポロとヴァールの頬に落ちた。ヴァールが性的暴行されそうになったことは少なからず彼女にショックを与え、せめて彼の初めての女になりたいと思ったのだ。

「ツェスィー……。ごめん。ちゃんと君を妻にできるまで、抱けない」
「兄様の意気地無し……」
「ごめん……」
「いいですよ。そんな兄様も好きですから。……分かりました。セックス〝は〟諦めます。王族は婚前交渉が禁止……つまり私が『処女』であればいいんですよね?」
「そうだけど……?」
「じゃあ、愛撫だったら大丈夫、ですよね?」

 つつーっと従妹の指がヴァールの胸を上から下へ這う。プリンツェッスィンの妖艶さはまるでその手の歴戦の猛者のようであった。その色香にヴァールは当てられ、鼓動を早くする。顔が熱くなり、真っ赤になってることが自分でも分かった。

 下半身は元気になり、履いていたスラックスを張り詰めさせる。そしてプリンツェッスィンの柔らかい指先がそこを這った。

「ツェスィー、ストップ。流石に最初は君からさせたくない。僕からさせて」

 ヴァールは自身の張り詰めたところに這わせていた手を掴み、くるりと従妹の体の向きを変え組み敷く。

「兄様、手馴れてませんか?」
「手馴れる訳ないよ。こういうことツェスィー以外にはした事ない」

 可愛い従妹に疑われたヴァールは困ったように笑い、プリンツェッスィンを俯瞰した。

「ツェスィー、愛してるよ」

 ヴァールはプリンツェッスィンの唇に自分のそれを重ねる。そして手を愛しい従妹の肩から胸へ撫で下ろした。服の上からそっとプリンツェッスィンの胸を触る。彼女の育ってない凹凸がない胸を優しく揉んでいった。

「兄様……すみません、気持ちよくないですよね。お母様くらい大きければ、兄様を喜ばしてあげられたんですが……」
「凄い喜んでるの分からない?」

 ヴァールはふにゃりと笑う。

「でも……胸は大きい方が……」
「それは誰が言ったの?」
「いえ、世の男性はそうなのかと思いまして」
「世の男性の好みは知らないけど、僕はツェスィーの胸が世界で一番好きだよ。例えば爆乳と言われてるお母様の胸が大好きなお父様だって、お母様の胸が小さかったらそれが好きだったと思うよ? つまり、好きな女性の胸の大きさが好みなんだよ」

 ヴァールは照れながらプリンツェッスィンに説明した。

「そうなのですか?」
「そうなの! 少なくても僕はそう」

 プリンツェッスィンは目の前で頬を染める美丈夫を見て微笑んだ。

「兄様、くすぐったいです」
「まだ性感帯が育ってないんだね。僕が育ててあげるから」

 ヴァールはそう言いプリンツェッスィンの額にキスを落とす。

「育ててください……。ツェスィーの全てを育てたのは兄様なんですから」
「ふふ、分かった」

 愛しい従妹からのお願いをヴァールは了承した。プリンツェッスィンが生まれてこの方彼女を育ててきたのは紛れもなくヴァールであって、彼は彼女にとって愛しい人であるが、育ててくれた人でもあるのだ。

 それから暫くヴァールはプリンツェッスィンの服の上から彼女の胸を触る。そして小一時間過ぎた頃、グレンツェンが主人の寝室の扉を叩いた。

「坊! 流石にもう終わりだ! 消灯しないと怪しまれるぞ!」

 既に日付は変わり、確かにまだ消灯してないと何かあったのかと怪しまれる。寝室から出てきた主人にグレンツェンは口を開いた。

「お楽しみ中、すみませんね」
「いや、大丈夫だよ?」

 ヴァールは従者に向かって微笑んだ。そしてプリンツェッスィンに対してシャイネンが心配そうに尋ねる。

「姫様、大丈夫ですか? どこか痛いところはありませんか?」
「え? どこも無いわよ?」

 シャイネンがなぜそのようなことを聞くか分からないプリンツェッスィンは首を傾げた。その様子を見たグレンツェンはヴァールを問いただす。

「まさか! 嘘だろ……。なにもしなかったのかよ……」
「え?」

 ヴァールは従者の発言が分からない様子だった。

「だから、エッチしてたんじゃねーのかよって事だよ!」
「は?! しないよ! 僕たちは王族だよ?! したらヤバいでしょ!」

 ダイレクトな歯に衣着せぬ従者の発言にヴァールは慌てる。

「〜〜! 坊の意気地無し!」
「それはツェスィーにも言われた……」

 本日二度目の意気地無しと言われ、ヴァールなりに落ち込んだ。そんなヴァールにシャイネンが助け舟を出す。

「若は誠実なだけです。姫様のためにそのような選択をなされたこと、立派だと思います」

 シャイネンはヴァールの選択は正しいとうんうん頷いた。彼女は主人が希望するから許可してるだけで、本音を言うと婚姻まで致して欲しくないのだ。

「グレンたちは何してたの?」

 そしてヴァールはグレンツェンに尋ねる。

「ふぇ?! な、なんで俺たちなんだよ!」
「え? いや小一時間も暇を持て余させて悪かったなと思って……」

 主人にいきなり聞かれ、グレンツェンは慌てふためいた。

「ハニートラップの訓練をしてました。いつか役に立つと思いまして」

 しらっとした顔でシャイネンは答えてみせる。

「おま! 何言ってんだよ!」
「は? 別に業務のことは報告するでしょ。まさか仕事の為じゃなかったの?」
「仕事のために決まってんだろ! じゃなきゃお前とあんな事しねーよ!」
「私だってアンタとあんな事、仕事じゃなかったらしないわよ」

 二人でしてたことをシャイネンに暴露され、グレンツェンは狼狽えた。

「シャイネン! まさか好きでもない人とキスしたりしたの?! あれだけ好きな人とじゃないとキスもそれ以上もしちゃダメって言ったのに!」

 自分の従者が自分を大切にしなかったのかと思ったプリンツェッスィンはシャイネンを注意する。

「姫様、大丈夫です。姫様との約束はちゃんと守ってますよ。キスもそれ以上もしてません。男女の駆け引きの練習をしてただけです」

 キッパリと言うシャイネンの言葉を聞き、プリンツェッスィンは安堵した。

「グレン……残念だったね」
「コイツ予想以上にバリケードが固い……」

 そしてヴァールがグレンツェンにそっと耳打ちし、従者も主人しか聞こえない声で答える。

 ヴァールは自身の魔力を使い、城内では御法度だが転移魔法を使ってプリンツェッスィンとシャイネンを可愛い従妹の部屋に送ったのだった。