ある日夕飯を家族六人で囲んでいたら、デーアが口を開いた。

「ヴァール、そろそろ貴方の婚約者を決めようと思うの。どうかしら?」

 突然のデーアからの打診にヴァールは狼狽える。

「もうお前も十八歳だからな。寧ろ諸国から見たら遅かったと言えるだろう。異論はないな?」

 ヴァイスハイトからも言われ、ヴァールの表情はさらに固くなった。

「ヴァールが決めるなら、ツェスィーも決めたらどうかしら?」
「そうだね。それがいいよ」

 アンジュもゲニーも乗り気で、プリンツェッスィンの婚約者まで決めようとする。

 次の日の夕飯の後、二人は三十以上にのぼる身上書を渡された。

「ある程度信用のおける者を選んでおいたわ。いい人いるといいわね」

 デーアにそう言われ、ヴァールが気まずい顔をして口を開く。

「ツェスィーが成人の義をする時まで決めなくていいですか? 僕は王甥なので、そんな焦ることは無いと思うんです」
「ツェスィーが十八ってことは、貴方は二十四ってことよ? ちょっと遅くないかしら?」

 ヴァールの提案にデーアを始め、両親たちは驚き反対した。

「大丈夫ですよ。お父様と父上によく似た僕の顔は二十四になってもちゃんと見られる顔だと思うので」

 そうヴァールは笑いながら答える。

「まあ確かにね」
「そうね、大丈夫そうだわ」

 アンジュとデーアは自分の夫をチラリと見て納得した。

「じゃあ、ツェスィーだけでも決めるか」
「父上! ヴァールお兄様が決めてないのに私だけ決めるのは如何かと思います。私も成人の義までいいです」

 ヴァイスハイトに婚約者を決めようと言われたプリンツェッスィンは即座にその提案を断る。

 頑なに婚約者を決めることを拒む二人を四人は怪しげに感じたが、一同言おうと思ってることを飲み込んだ。

 そしてその日からヴァールは兄妹でも健康な子をもうけられる魔法の研究を本格的に始める。

 まずゲニーにもう少し魔法を知りたいと申し出て、隣国であるエーデルシュタイン王国にいる彼の師匠であったレーラー・ムスケルを訪ねることにしたのだ。

「ムスケル元魔法団総帥、お会いすることが出来光栄です」

 ヴァールは深深と頭を垂れた。

「おお、ゲニーの甥のヴァールか! お前もワシの弟子になるのだから、師匠と呼んでいいぞ。老い先短いワシだが、お前の役に立てることを祈るよ」
「はい、師匠」

 快活な話し方の老人は優しくヴァールに笑いかける。二人はローテーブル越しに向かい合ってソファーに腰かけた。

「単刀直入に聞くのですが、病気を持たない子を魔法で作ることは可能でしょうか?」
「……病気の因子がない子、ということか?」
「はい」
「病気にかからない人間は居ないからな、無理だろうな」
「生まれながらの病気だけでもいいので、どうにかならないでしょうか?」

 なかなか引き下がらないヴァールを見て、レーラーは溜息をつく。

「ヴァール、お前は何をしようとしている?」
「言えば協力をしてくれますか?」
「内容にもよるな」

 二人の駆け引きが始まり沈黙が数秒流れたが、ヴァールがそれを破った。

「もし理由を言うなら、絶対協力してもらわないといけません」
「ほう? ワシを脅す気か? ヒヨっ子が何を言うんだ」

 レーラーは面白そうに髭を触りながら笑う。

「いえ、脅しはしませんよ。お願いをしてるんです」
「お願い……ねえ」

 ヴァールは意を決してレーラーを見据えた。

「フリーデン王国が傾く可能性があるのでお願いをしてるのです」
「ほぅ……? つまり?」
「プリンツェッスィン王女と僕の子でも健康な子が生まれる方法を探してるのです」

 そしてとうとうヴァールとプリンツェッスィンの秘密をレーラーに打ち明ける。

「成程……。そういうことか。確かにお前たちは従兄妹だが、双子同士の子だ。遺伝子的には兄妹、だからな」
「はい。魔法で何とかならないでしょうか?」
「何とかなったとして、それが良いことだろうか?」
「分かりません……。でも僕たちにはその道しかないんです。僕もプリンツェッスィン王女も、お互い以外とは婚姻を結ぶつもりはありません。つまり子は成せないでしょう」

 目を伏せ弱々しく言う目の前の若者を見て、レーラーもうーんと唸った。

「少し考えさせてくれ」
「ありがとうございます」

 結局後日手紙を送るということになり、ヴァールはエーデルシュタイン王国を出ることした。



 ヴァールがフリーデン王国へ帰路に就く頃、ゲニーは執務室で妻アンジュと共に居た。

「もうヴァールは師匠に会ったかな?」
「ムスケル様、今は聖女のケルン様と再婚したみたいよ? 聖女は王の側妃になる制度も見直されて、希望しない者は辞退できるようになったみたい」

 アンジュもお世話になったケルンが元夫とやっと無事結ばれたことを喜ばしく思う。

「そうなの? なら僕が王様になる必要なかったかぁ〜」
「そんなことないよ? その制度改正も数年前だし、それにゲニーが王様になったから、沢山の人も救えたんだから!」

 ゲニーが冗談交じりに言い、アンジュは夫の功績を称えた。

「……ヴァールも、好きな人との未来のために戦ってるんだな。……頑張れよ」
「え?」

 そしてボソリとアンジュに聞こえない声でゲニーが呟く。

「何でもない! アンジュ、キスさせて?」
「今何かはぐらかしたでしょ! 隠し事はなしなのに!」
「今は話さないだけだよ。いつかは話すからさ」
「もう……。分かったわよ、いつか話してね?」
「勿論。君に隠し事したことある?」
「分かる範囲ではないわ。分かる範囲では、だけど」

 ゲニーは妻の腰を抱き寄せ、二人は唇を重ねた。



 数時間後、ヴァールとグレンツェンが帰宅した。従者は報告の為に席を外し、別の部屋にいる。

 帰宅したところをプリンツェッスィンが出迎えた。

「ただいま」
「兄様、おかえりなさい!」

 ヴァールは眉を下げ、愛しい従妹を見て片膝をつく。

「ツェスィー、おいで」

 そして腕の中へ呼んだ。プリンツェッスィンは素直にヴァールの腕の中に入り、抱きしめられる。

「兄様?」
「はぁ、ツェスィー……。愛してるよ」

 ぐりぐりと顔をプリンツェッスィンの肩に(うず)め、ヴァールは肩の力を抜いた。

「私も愛してますよ。兄様、疲れたんですか?」
「うん、ちょっとね……」

 プリンツェッスィンは愛しそうに従兄の頭を撫でる。

「ツェスィーを感じたい、今すぐ」
「ひゃ!」

 そう言ったヴァールはプリンツェッスィンをお姫様抱っこし、寝室へ入っていった。

「シャイネンたちが居ません!」
「大丈夫、最後まではしないから」

 そしてプリンツェッスィンをベットに押し倒す。

「私はいいんですよ?」
「ツェスィー、そういうことは言っちゃダメ。最後までしたくなるから」
「兄様の意固地……」

 可愛い従妹はぷうっと頬を膨らました。

「ツェスィー、愛してるよ」
「私も、愛してます」

 プリンツェッスィンの服を脱がし、下着姿にさせる。ヴァールも自身の服を脱ぎ、下履だけになった。

「ピンクの下着、可愛い。新しいね」
「兄様が毎日求めるから、下着のレパートリーが多いんです。それに、兄様に可愛いって思って貰えるよう飽きられないようにしてるんです」
「ツェスィーならどんな下着でもいいのに」

 ヴァールは可愛い従妹の発言を聞いて、くすりと笑う。

「それは詭弁です! もし子供用のかぼちゃみたいな下着履いてたら萎えますよね?」
「え? すごい可愛いと思う」

 目の前の愛しい従兄が真顔で答えたのを見て、プリンツェッスィンは溜息をついた。

「ダメです……兄様は子供も射程範囲内でした……」
「ツェスィー、何か前々から誤解してるんじゃないかと思ってたけど、僕は子供が好きなロリコンじゃないからね?」

 ヴァールは不服そうな顔をし、プリンツェッスィンを優しく咎める。

「ロリコンじゃないんですか?」

 プリンツェッスィンは頬を膨らます従兄の発言に驚いた。

「違うよ! ツェスィーがたまたま幼い容姿をしてるだけで、決してロリコンじゃない!」

 ヴァールの真剣な眼差しにプリンツェッスィンは惚れ惚れとする。そして、今まで聞いてみたかったことを問うた。

「兄様っていつから私のことが好きなんですか?」
「……ツェスィーに初めて会った時から……」

 ヴァールは少し気まずそうに照れながら答える。

「ロリコンですね……。赤子なのでもうそれはロリコンではなくぺド……んん!」

 咳払いをするプリンツェッスィンにじとりと見つめられ、ヴァールは更に気まずくなった。

「だから! ツェスィーが好きなだけで、ロリコンじゃないの! それに僕たちはぺドフィリアの定義に入らないから!」

 それでも一生懸命に弁解をする。

「じゃあ、私が母上みたいに落ち着いていて、お母様みたいなボンキュッボンのプロポーションでも好きでしたか?」
「好きだよ……。どんなツェスィーでも好き」

 ふんわりとそのようなプリンツェッスィンを想像したヴァールは頬を染めた。

「……兄様は盲目的に私のことが好きなんですね」
「じゃあツェスィーはどんな僕でも好きではないの?」
「……好きですよ。兄様がどんなでも好きです。私の本能が兄様を欲してるんです」

 プリンツェッスィンはふわりと天使のように微笑む。

「ありがとう。あと……ツェスィーはいつから僕のこと好き?」

 ヴァールもずっと気になっていたことを可愛いお姫様に問うた。

「物心ついた時からですよ。気付いたら好きでした」
「そっかぁ。じゃあ本当に初恋なんだね」
「兄様も、ですよね?」
「勿論。ツェスィーしか好きになったことないよ」

 二人は唇を合わせる。そしてヴァールのキスが下へおりていった。上の下着をはぎ取り、胸元に何度もつける赤い花はプリンツェッスィンは自分のものだという印で、彼女の全てを暴けない切なさが彼をそうさせる。

「んんっ。あん。にい、さまぁ」
「胸だけで感じちゃった?」
「兄様の意地わるぅ」

 ヴァールはプリンツェッスィンの薄桃色のぷっくりとした突起に吸い付いた。

「あああ――!!」

 はぁはぁと浅い息をしてるプリンツェッスィンの下の下着を脱がし、太腿の裏に手を添え上に持ち上げる。

「ツェスィー、もうとろとろになってるね」
「やぁ、兄様見ないで」
「何で? こんなに可愛いのに」

 指をくぷぷととろとろにふやけた泥濘に埋めていった。そしてちゅこちゅこと抽挿する。

「やぁ、んん。兄様、ダメ、ダメです!」
「ツェスィーのここはダメって言ってないよ? もっとって言ってる」
「やああ! ああん!」
「きゅうきゅう締め付けてくる。そんな気持ちいい?」
「きもち、いいです。あん、あああ――!」
「イったね。可愛い」

 ヴァールはプリンツェッスィンの額にイけたことへのご褒美とばかりにキスを落とした。

「兄様は……イってないですよね?」
「まあね。でもツェスィーが気持ちいいならいいんだ」
「兄様、挿入れなくてもできる方法ありますよ? 素股してください」

 愛しい従妹から素股という言葉が出ると思わなかったヴァールは目を白黒させる。

「ツェスィーってどこからそういうの聞いてくるの? 心配になっちゃうよ」
「閨教育や友達とか……。あとお母様たちから……」
「……うーん。あの二人は偏ってる気がするから怖い。特に母上……」

 自分がどんなプレイで出来たかくらいは知ってるヴァールは頭を悩ました。

「母上の好きなのも、してみたいです」
「……ツェスィーが望むならするけど、ソフトなのからね」
「ふふ、分かりました。兄様、しましょ?」

 ヴァールは自身の下履を脱ぐ。ブルンとお腹までそそり立つ太い肉棒が現れ、プリンツェッスィンはごくりと生唾を飲んだ。

 プリンツェッスィンの両足を垂直に持ち上げ、その間に自身の肉棒を出し入れする。愛しい従妹のふわふわの太腿に挟まれ、ヴァールの目はポーっとし、頬を赤く染めた。

「ツェスィー、ツェスィー!」
「兄様、気持ちいいですか?」
「ツェスィー! はぁ、んん、ああ!」

 プリンツェッスィンのお腹と胸に白濁としたものを吐き出し、ヴァールは荒い息をする。

「ツェスィーは、僕のものだ……」
「ええ、私は兄様のものです」

 二人は口付けを交わし、それは深くなっていき、貪欲に、貪るようにキスをしたのだった。



「坊〜! どこだ? トイレか?」
「……! まさか! 姫様!」

 ガチャっといきよいよく従者二人はヴァールの寝室に入ると、ヴァールとプリンツェッスィンが裸でキスをしているところだった。

 すぐさまシャイネンは隣に立ってる従者の目を潰す。

「いってぇええ!!」
「姫様の裸を見るな!」
「見てねぇよ! 姫さん布団を肩からちゃんとかけてたから見られねぇよ! ってか目が死んだああ!」
「煩い。そんな痛むならアンジュ様にでも治してもらいなさい」
「理不尽過ぎる……」
「若……。私が言いたいことは分かりますよね?」

 シャイネンが鬼の形相でヴァールを射抜いた。

「最後まではしてないから……」
「そうよ! 素股までしかしてないわ!」
「ツェスィー?!」

 可愛い従妹のこのあけすけな言い方は父親譲りだろう。

「ほう……。素股ですか……。若、覚悟はいいですか?」

 鬼かはたまた魔王かのような顔でシャイネンはヴァールに迫った。

「ごめん! 挿入はしてないから! シャイネン! 待って!」

 女性だからといっても、流石にいつも暗殺術を鍛えてる者に勝てるとは思わなかったヴァールは必死にプリンツェッスィンの従者に許しを乞う。

「当たり前です! 姫様は、婚姻前は純潔でなくてはいけないんです! 今回は素股で終わりましたが、この調子だといつ本番になるか分かったものじゃありません!」
「シャイネン、許してやれよ。坊ならちゃんとストッパーきくから」

 普段感情をあまり表に出さないクールビューティーのシャイネンが怒り狂ってるのをグレンツェンが収めた。

「分かりました。もし、もし若が姫様と婚姻をする前に姫様の純潔を奪ったら、私も若の命を奪いますからね!」
「分かった。そのときはシャイネンに命を委ねるよ」

 シャイネンにピシャリと言われ、ヴァールも腹を括る。

「俺は坊が殺されそうなら命をかけて戦うぜ? 坊を殺りたかったら、俺を先ず倒せ」
「アンタなんて秒殺よ」
「可愛くねぇ奴!」

 グレンツェンもシャイネンにピシャリと言われ、不貞腐れた。

「さあ、もうすぐ夕飯です。着替えてください」

 怒りを何とか鎮めたシャイネンにプリンツェッスィンとヴァールは急かされ夕飯の席へ着くためにダイニングへ向かったのだった。