狭い廊下が奥へと続いていて、その右手のドアはトイレと風呂。
そして左手がダイニングキッチンになっている。

誰かがいるとすれば、ダイニングキッチンか、その奥にある寝室かのどちらかだろう。
太一はゴクリと唾を飲み込んで傘立てからビニール傘を引き抜いた。

体の前でかまえて靴を脱いで廊下に上がる。
古い家がギシッと軋む音を立てるたびに背中に冷や汗が流れていく。

息を殺して一歩一歩前に進み、ダイニングキッチンのドアの前にたどり着いた。
もう1度傘を握り直して一気にドアを開ける。

その瞬間複数人の笑い声が聞こえてきた。
実際にそこにいるのではない。

テレビがついていて、お笑い芸人が出ているのだ。
その笑い声に面食らっていると、見知らぬ男が太一の前に姿を現していた。
「だ、誰だ!?」