太一はそろそろと玄関へ近づいて耳を寄せると中の様子を確認した。
特に物音などは聞こえてこない。

人の気配もなさそうでホッと胸をなでおろした。
昨日引っ越してきたばかりで変なヤツに侵入されたくはない。

安かったとはいえ、初めて購入した自分の家だ。
太一は玄関の鍵を取り出して鍵穴に差し込んだ。

回すとカチッと小さな音が響く。
ちゃんと鍵もかかっているし、やっぱり大丈夫だったとドアを開けたそのときだった。

明らかに自分のものではない運動靴がそこに置かれていることに気がついて氷ついた。
運動靴は元々白かったようだけれど土で汚れて昨日キレイに掃除した玄関の中でひときわ異彩を放っている。

太一も運動靴は持っていたけれど、今は必要ないのでダンボールの中にしまったままだった。

明らかに家の中に誰かがいる。
太一は息を殺して狭い室内へ目を凝らした。