物陰からその様子を見ていた不動産屋の男がパンパンッとホコリを払うように手を叩く。
不動産業を営んでいる男の名前は飯尾。

けれど取り扱っているのは普通の物件ではない。
いわぬる『事故物件』というものだった。

格安で手に入る代わりにあらゆるトラブルが過去にそこで起きていた。
今回のケースは冨永祐が以前暮らしていた家で、妻を殺し、床下に埋めた。

というものだった。
冨永祐は今まで捕まることなく逃げおおせていた。

けれど今頃になって家を購入する男が現れて焦ったのだろう。
行き場がないと泣きついてこの家に居座ることに決めたようだ。

偽名を使っていたあの男に家を売ったのも、もちろん飯尾の思惑通りのことだった。

彼のことは散々調べさせてもらって、彼と冨永が接触したときにきっと面白いことが起こると踏んだ。

結果的に彼の一人勝ちにみたいになってしまったが、もちろん飯尾がそのまま逃がすわけがなかった。