冨永は1人でさぞ混乱したことだろう。
違う、知らないと繰り返し、わけのわかないまま殺されたに違いない。

冨永の胸には銃痕が残っていたけれど、今まで通報された様子がないのは民家が遠く離れているからだろう。

おまけにここらへんでは猟銃を持った猟師が何人もいる。
ドォンドォンと響くような銃声なら、毎日のように聞こえてきていた。

銃声が生活音になっているから、ちょっとやそっとの音で反応する人はこのあたりにはいない。

そんな環境も手伝って、今のいままで冨永はひとりで横たわる結果になったのだ。
その体はすでに硬直し始めていて、触れなくても冷たいことがわかった。

おかげでこれから先の作業もスムーズに進むというものだ。
男は寝室から持ってきたハンマーで冨永の顔面を潰し、歯を抜き取った。

そして硫酸で指の指紋も一つ残らず消し去った。
これで警察が操作してもすぐには本物の身元を知ることはできないだろう。

部屋の中には俺の私物に俺の指紋が大量についている。