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翌日も冨永は家に居座った。
鍵業社がくるということは、もちろん男がチラつかせておいたのだ。

冨永から見た男はシステムエンジニアで忙しく、昼間家にいることのできない仕事人。
だから自分がこの家にいれば鍵交換もしやすくなる。

そう提案してきた冨永の表情は自身に満ち溢れていた。
まるで自分がこの家の主とばかりに上から目線だった。

いずれは家も晴子も全部自分のものにしてやる。
そんな野心的なものを感じ取ることもできた。

男はそういう勝ち気な人間が嫌いではなかった。
どんな場面でも屈せずに立ち向かっていく。

もしも別のところで冨永と出会っていれば、こんな関係にはならずに済んだのかもしれない。