『晩ごはん……ですか?』
男の要求にミカはますますわからないと行った様子で首をかしげた。

『そう。俺の恋人として振る舞いながらね』
『あ、恋人役を演じるってことですか?』

ここに来てようやくミカの表情が明るくなった。
恋人役は何度か経験があったみたいだ。

『そう。そういうこと。俺の恋人でありながら、冨永に気があるフリをしてほしいんだ』

『それでいいんですか?』
再びミカの表情は怪訝そうなものに変わる。

だけどこれでいいのだ。
冨永にはこれから大きな仕事をしてもらうことになる。

その前に少しでもいい気分にさせてやろうと考えたのだから。
『人の女から興味を持たれるのは特別感があって嬉しいもんだからな』

男は言いながらミカにタクシー代の1万円と消費代、そしてピンクルージュで決められている代金を手渡した。