今はサラリーマンの姿がちらほら見えるだけだけれど、時間がたてば人が増えてくるから、気にしているみたいだ。

『とにかく、座って』
ミカを自分の隣に座らせるとこれからの計画を話してきかせた。

『君にはこれから僕の家に向かってもらう』
『お兄さんは?』

こんなオヤジのことをお兄さんと呼んでくれたことに少しだけ胸が暖かくなる。
最も、店のマニュアル通りなのだろうけれど。

『俺の家には冨永祐という男がいる。背丈も年齢も俺に似てるかな』
『その人の相手をするんですか?』

『いや、そこまでする必要はない』
キッパリと否定した男にミカは困惑した表情を浮かべる。

ミカの職業はもともと男性とベッドを共にする仕事だ。
それを拒否されたらなにをしていいのかわからなくなる。

『君にはその冨永という男と一緒に晩ごはんを作って欲しいんだ』