もちろん、警察だけは論外だった。
自分の身元がバレれば身の危険を引き寄せることになる。

男の頭には最初から警察に通報するという選択肢はなかった。
『勝手入ってすみません。僕、行き場所がなくて』

もじもじしている冨永はどう見ても弱者だった。
だけど勝手に人の家に入り込んでテレビを見ていた時点で普通の肝っ玉ではないことはわかっていた。

油断しちゃいけない。
男は瞬時に総判断した。

冨永は弱者を演じているだけだ。
下手に出ればきっと牙を向いてくる。

下手をすればこの家から追い出されるのは自分の方になるかもしれない。
男は少し会話しただけの冨永に対して、そう感じていた。

そう、最初からわかっていたのだ。
冨永のいう男の強かさ。