だから、ひと気の少ないこの家を選んだ。
長年売れ残っている中古物件だと言うだけあって、中はボロボロで好んで金を出す人などいないような家だった。

だけど男にとってはそれくらいでちょうどいい家だった。
だけど先程言ったとおり、冨永の出現によって事態は急変した。

『僕の名前は富永祐です』
おどおどとした様子で自己紹介をした冨永の顔を思い出す。

ただ昔の住人というだけなら追い出してしまえばそれで終わりだった。
あまりにしつこければ拷問してやればいい。

誰かを蹴ったり殴ったりすることについてはこちらはプロだ。
人間の急所をしっている。

それくらいの経験はいくらでも若い頃に積んできたから、容量もわかっている。
だけど男は冨永を追い詰めはしなかった。

最初に冨永を見た瞬間に背丈、体格がよく似ていると感じた。
髪型を似せればきっともっと自分に似てくるだろう。

あぁ、こいつは使えるかもしれない。
一番最初に出会ったときから男はそう思っていたのだ。