それを恐れたのかもしれない。
あれだけ図々しい男でも、これにだけは手をつけなかった。

太一は箱の中からハンマーを取り出した。
片手で持つにはズッシリと思いそれを抱えてキッチンへと戻る。

普段仕事をするときは後の片付けを簡単にするために死体の下にブルーシートを置くようにしている。

だけど今回は関係なかった。
太一は冨永の顔めがけてハンマーを振り下ろす。

一撃ではまだ顔の原型がとどまっているので、2度3度と繰り返していく。
途中で潰れた口に手を突っ込んで歯を全部引っこ抜いた。

更に段ボールの中から瓶に入った硫酸を取り出すと、蓋を開けて冨永の指を一本一本つけていった。

室内に刺激臭が満ちてむせる。
周囲に民家はないから、気にせず窓を開けて換気した。

冨永の指紋はあっという間に溶けて消えていく。
引っこ抜いた歯は一つ残らずビニール袋にいれた。

「お望み通り、この家はお前にくれてやるよ」
太一はそう呟いて立ち上がったのだった。