玄関先には女性もののパンプスが置いてあったのだ。
それは薄汚れた運動靴の隣にキチンと揃えて置かれている。

「ただいま」
声をかけてドアを開けると、そこには食卓を囲んでいる冨永と女性の姿があった。

「あ、太一おかえりぃ」
女性が太一の姿を認めて気楽に声をかけてくる。

テーブルの上にはサラダやパスタなどが並んでいてにぎやかだ。
どこから持ってきたのかふたりともエプロンをつけていて、今料理がすべて終わったところだとわかった。

「晴子、お前なんで……」
女性を見て太一が愕然としていると、晴子は眉をよせて「なんでって、なにが?」と、質問を返してきた。

太一はぶんぶんと首を左右に振る。
そうだ、この家に引っ越してきたことは晴子には伝えておいたのだ。

まだ若くてキレイな晴子がここにいることに驚いてしまったけれど、別に驚くようなことではなかった。