☆☆☆

明日には鍵交換がきてくれるから、そうしたら冨永とはおさらばだ。
きっと、もう二度と合うこともないだろう。

そう思うとなんだか胸の奥がモヤモヤしてくるのはどうしてだろう。
あんな非常識な人間のことなんてほっておけばいいのに、床に額を押し付けている姿が何度も蘇ってきてしまう。

ここで情を見せればきっとあいつはつけあがる。
1日だけが明日も、明後日もと出ていく期間を先延ばしにされるだけだ。

太一は自分の両頬を軽く叩いて自分を叱責した。
冨永には今日出ていってもらう。

そして二度と戻ってこないように念を押す。
そう決めて玄関に入ったとき、異変を感じて太一はまばたきをした。

さっきまでの威勢はあっという間にしぼんでしまい、家の奥から聞こえてくる笑い声に脱力する。