「できません」
富永は太一の言葉を遮るようにして言った。

親戚とは妻側の親戚のことで、自分の親戚とは1度も会ったことがないと言う。
そんな人がいるだろうかと勘ぐったけれど、富永の両親は駆け落ち同然で結婚したようだ。

それなのに早くに死ぬなんて、人生は本当になにがあるかわからないものだ。
「駆け落ちなんてしたからバチが当たったんですよ」

富永は暗い顔をしてつぶやいた。
いちいち人に同情をさそうやつだと太一はため息をつく。

「お願いします! 家の中のことはすべて僕がします! だからここにいさせてください!」
さっきは1日だけと言っていたはずだけれど、やはりずっとこの家に居座るつもりだったみたいだ。

他人が家にいるとわかっていながら入り込み、勝手にテレビまでみていた男なのだからそれくらい図々しくてもおかしくはない。

太一は腕組みをして唸り声を上げた。
正直男のひとり暮らしだとすぐに部屋の中が汚くなる。