〇 学校・屋上(昼休み)

人気のない廊下で、二人きりの夕夏と龍樹。
龍樹が夕夏を壁際に追い込み、冷たく見下ろす。

龍樹「アンタ、俺のこと脅してんの?」
夕夏「え?」

心当たりがなく真っ青な顔をしてる夕夏。

夕夏(一体何がどうなってるの――!?)

〇学校・教室(休み時間)

生徒達が思い思いに時間を過ごしている中、先に座ってスマホを触っている夕夏。
夕夏のもとに二人のクラスメイトが駆け寄ってくる。

友人1「夕夏!スコアどう!?」
友人2「今日『カラスタ』のイベント最終日だったよね?」

夕夏は誇らしげな表情で、二人に向けてスマホを見せる

夕夏「もちろん、課題クリア済」
友人1「全項目オールSじゃん! 今回のイベント一週間しかなくてキツかったのに」
夕夏「ふふ、愛の力ってやつよ」

〇(回想)夕夏とカラスタの出会い

夕夏(カラスタことカラースターズは去年リリースされた大人気アプリゲーム)
(色に準えたキャラクター達を育成してモノクライドという敵組織と戦う)
(私自身もカラスタにどハマりしている一人だ)

(回想終了)

〇 学校・教室(休み時間)

友人1「夕夏のハマり方すごいよね」
友人2「誰だったっけ、夕夏の推し」
夕夏「桃井園生(ももいそのお)くん! ピンク担当ふわふわ男の娘!」

熱く語る夕夏の隣の席から、ペンが転がり落ちる。

夕夏「神山くん落としたよ」
龍樹「……ども」
夕夏「うるさくしてごめんね」
龍樹「いや、大丈夫」

目を見て謝ろうとした夕夏から顔を背けた龍樹は、会釈をすると静かに席を立つ。
気まずくなってお互い見つめ合う三人。

友人1「せ、せっかくだから今週の休みにコラボカフェ行かない?」
友人2「いいね! まだ夕夏の推し自引きできてなかったし」

顔を青褪めさせる夕夏。

夕夏「ごめん! 今週用事あって……」

夕夏(コラボカフェには行きたいけど今回ばかりは我慢するしかない)
(だって今週はーー)

〇屋外・イベント会場(日中)

晴れ渡った空の下、大勢の人が行き交う中で会場を見上げる夕夏。

夕夏(久々の即売会なんだから!)