最後のレッスンのときに、はじめて王子に抱き着いた。スレンダーな体をアピールするように。王子の頬が赤くなったような気がした。
「私と付き合ってください」
「……」
王子は沈黙する。
「俺は……」
「知ってるよ、ダイエットが成功するために期待させて、成功すると振るって作戦でしょ?」
「違うんだ。実は俺……ふくよかな女性が好きなんだ。太った女に罵声を浴びせるのが大好きで。だから、痩せると興味が薄れるというか」
「じゃあ私のことメス豚呼ばわりしたのは?」
「俺の好みのタイプすぎて、優しくできないでいたんだ」
私は唖然とした。目の前の王子がまさかの豚好きだったのだから。
「じゃあ私、また太るから、そしたら付き合ってよ」
「でも、痩せたおまえも嫌いじゃない。あんなに毎日メッセージを用事もないのに送り付けて来る女はお前くらいしかいないからな。おまえからメッセージこないと、今はさびしい」
そんなことを言う王子は結構かわいい。
「でも、全国のデブ女性から講師の依頼があるんでしょ、浮気しないでよ」
「今までみたメス豚の中でお前ほど、いい女はいなかった、一目で気に入ったよ、贅肉、ハミ肉の写真も最高だった、おまえを食べたくなる」
少し照れながら王子が自白した。
世の中何が幸いするのかわからないものだ。
毒舌王子の意外な趣味が私の恋を実らせたようだ。
世の中の人々の趣味は様々なのだから。