新しいシャンプーを買って一週間が過ぎた。席替えをしてからあっという間に時間が流れていく。前は一週間がとても長いと感じていたのに今ではほんの一瞬だ。

毎日学校に行くのは楽しみだけど、なかなか晴翔と話すことができない。せっかく席が近いのにこれじゃあもったいない。

毎日一言でも晴翔と話せたらいいんだけどな。

何だか日に日に私の髪が艶々のトゥルントゥルンになっていく気がする。それにいい香りだってしているはずだ。この香り、晴翔にも届いてるといいな。

「おはよう、理菜」

「うん、おはよう」

いまだに一華とはうまく話せてない。避けてるわけじゃないけど、恋のライバルかもしれないと思うとうまく話せない。

私の反応がよくないからか、一華も私に遠慮がちになってきた気がする。

こんなの望んでいないのに。もう、どうしてこうなっちゃうんだろう。

「最近、理菜元気なくない?何か嫌なことでもあった?」

一華が心配そうな顔をして私に聞いてくる。

「元気がないわけじゃないんだけど」

「部活の大会近いんだもんね。今、大変な時だ」

一華の言葉にギクっとする。武道が強い女子って可愛く見えない。晴翔には私の少林寺のイメージをあまり持ってほしくない。

「今度の大会、どこであるんだっけ?」

「来週の土曜に北光学院高校で。大会というか模擬試合だけどね」

一瞬、晴翔の背中がピクっと動いた気がした。私、何か変なこと言ったかな。

「その日、ちょうど部活が休みだ。ねえ、私も模擬試合見に行っていい?」

思わずびっくりした。一華が少林寺の模擬試合を見に来る?

「少林寺なんか見てもつまらないよ」

「そんなことないよ!」

突然、一華が大きな声を出す。

「理菜が頑張っているところ、見たことなかったから。少林寺しているところを見てみたいとは思ってたんだ。もし見に行っていいなら見に行きたい」

「うん、わかった」


一華がいつもの楽しそうなケタケタとした笑いをした。一華の楽しそうな笑顔を見たのは久しぶりかも。

一華を見てると、何だか素っ気ない態度をとってきたのが悪い気がしてきた。一華は私のこと嫌いじゃない。それは分かってる。だけどまだ心の中でチクチクと小さな棘が刺さる。

「理菜の模擬試合、楽しみにしてるね」

そう言って一華は前に向き直り、一時間目の授業の準備を始めた。

私の心をモヤモヤさせるものはもう一つある。少林寺だ。最近、どうもまた調子が悪い。いまいちキレがないというか、勢いがないというか。

少林寺は楽しい。だから少林寺の強い高校を選んで全道一位にもなった。だけど全国大会に行って自分の実力を思い知った。私より強い人はたくさんいる。

もっと上を目指しても勝てるかどうかわからないし、修也みたいに全国一位を目指すような熱意もない。

そんなことを考えているからか、何だか練習も調子が良くない。ずーっとモヤモヤばっかりで嫌になっちゃう。

窓の外を見ると、朝来たときよりも空が曇りだした気がする。雨が降ってきたら大変だ。

どうか、雨が降りませんように。そう祈りながら私は空を眺めた。