「それじゃあ、お疲れさまでした」
西園寺先輩の掛け声で今日の部活が終わった。模擬試合の時と同じで現地解散だ。
北丘高校からは私と、西園寺先輩が二位で全国に行ける。
大会が終わったと思うと急に疲れがどっと襲ってきた。
「おめでとう、理菜」
いつの間にか隣に修也がいた。夏の時もそうだ。自分が悔しいはずなのに、そんな素振りを見せず私におめでとうと言ってくれる。
「ありがとう」
「そんな寂しい顔するなよ。俺まで惨めな気持ちになるだろ」
気まずいのが私の顔に出てたみたい。
「なんかいつも私がいいと修也の順位が悪いから」
「そんなこと気にしてたのか。そんなの別に関係ねえよ。理菜の実力が報われて、俺の実力が足りなかっただけだ」
余計なことを気にしてたのは私だけみたい。急に恥ずかしくなってきちゃう。
「今日の修也の演武、すごく気迫が伝わってきたよ」
修也がどんどんうまくなっているのは私にはわかる。あれだけ頑張っているだもん、決してその努力は無駄になんかなってないよ。
「ま、俺は次の大会に向けて練習するだけだ。夏こそは俺も全国に行くからな」
やっぱ修也はこうじゃないと。
「どうやら理菜にお客さんがきたみたいだぜ」
修也の視線の先には一華と晴翔がいた。
「それじゃあ俺は先に帰るよ。気をつけてな」
そう言って修也は先に帰ってしまった。
一華と視線を合わせる。うん、一華は修也のところに行ってきて。
一華は頷くと修也のあとを追いかけて行った。私と晴翔の二人がその場に残る。
晴翔が伏し目がちに私を見る。それだけで心臓がドキドキする。
私も晴翔もお互いに言葉が出そうで出てこない。二人の間を沈黙が流れる。
何か言わないと。でも何を言えばいいんだろう。
もじもじしていると先に晴翔が口を開いた。
「ごめんよ、遅くなって。もっと早くから来たかったんだけど部誌の製本作業がなかなか終わらなくて……」
「もう、見にきてくれないかと思ったじゃん!」
本当はこんなこと言うつもりじゃなかったのに。晴翔の声を聞いたら思っていたことが溢れてきちゃう。
「全然来ないから心配したじゃん。何かあったんじゃないかとか、今日の大会のこと忘れちゃったんじゃないかとか」
「遅くなりそうってメッセージは送ったけど」
「大会中はスマホは見ないようにしているの」
晴翔と話せて、見に来てくれてすごく嬉しいのにどうして素直に言えないんだろう。
「ごめん、私色々言いすぎたね。晴翔が私の番に間に合ってくれてよかった」
晴翔がホッとしたように笑う。
「俺も岩田の少林寺を見れてよかった。やっぱ岩田ってすごいよ」
ふと、自分の演武のことを思い出す。あの時は無我夢中でやってたけど、大きな声出したりしてたよね。あれ全部、晴翔に見られてたんだ。恥ずかしくて晴翔の顔が直視できない。
「あれ、何かあった?」
突然の変化に晴翔は戸惑ってしまった。
「なんか、演武を見られてたと思うと急に恥ずかしくなっちゃってさ」
もう、晴翔ったら笑い出してるよ。
「だって岩田が少林寺見にきてって言ったんだろ」
それはそうだけど。見てほしいけど、見られたら恥ずかしんだよう。
ぷーって頬を膨らます。その顔を見て晴翔は余計に笑う。
晴翔の笑顔ってすごく優しそう。こんなの見たら何も言えなくなっちゃうよ。
「少林寺をしている岩田はすごくかっこよかった。魔法の力で変身したみたい。小説に出てくる戦うヒロインって感じだった」
それって晴翔が書いた小説に出てくるヒロインだよね?もしかして私って晴翔のタイプなの?
きっと私の頬が赤くなっている。それを見て晴翔も急に恥ずかしそうに顔を背ける。
「いや、岩田の少林寺がすごくよかったって意味で他に別な意味とかはないよ」
私の考えすぎか。ちょっと残念。それにしては晴翔、すごい慌ててたね。
いつの間にか晴翔と自然に話せるようになっていた。晴翔は私のことどう思っているんだろう。私と話すようになって少しは意識をしてくれるようになったのかな。
一人、また一人と会場から人が出ていく。
「岩田も大会終わって疲れているよな。ごめんな、長々と話しちゃって」
ごめんじゃないよ。私は晴翔と話せてすごい嬉しいよ。そんなの直接言えないけど。
晴翔が帰ろうとする。それを見て席替えがあるのを思い出した。
席が離れたら晴翔と話せなくなっちゃうのかな。
せっかく晴翔と仲良くなれたと思ったのに。
そんなの嫌だ。もっと晴翔と話したい。
今日だって、もう少しだけでも晴翔と話したい。
「あのさ、晴翔って地下鉄だよね」
「そうだけど」
もう少しだけ晴翔と一緒にいたい。
今だったら言える気がする。
「乗り換えまで一緒に帰ってもいい?」
私は体全身が照れて赤くなっているのが自分でもわかった。
西園寺先輩の掛け声で今日の部活が終わった。模擬試合の時と同じで現地解散だ。
北丘高校からは私と、西園寺先輩が二位で全国に行ける。
大会が終わったと思うと急に疲れがどっと襲ってきた。
「おめでとう、理菜」
いつの間にか隣に修也がいた。夏の時もそうだ。自分が悔しいはずなのに、そんな素振りを見せず私におめでとうと言ってくれる。
「ありがとう」
「そんな寂しい顔するなよ。俺まで惨めな気持ちになるだろ」
気まずいのが私の顔に出てたみたい。
「なんかいつも私がいいと修也の順位が悪いから」
「そんなこと気にしてたのか。そんなの別に関係ねえよ。理菜の実力が報われて、俺の実力が足りなかっただけだ」
余計なことを気にしてたのは私だけみたい。急に恥ずかしくなってきちゃう。
「今日の修也の演武、すごく気迫が伝わってきたよ」
修也がどんどんうまくなっているのは私にはわかる。あれだけ頑張っているだもん、決してその努力は無駄になんかなってないよ。
「ま、俺は次の大会に向けて練習するだけだ。夏こそは俺も全国に行くからな」
やっぱ修也はこうじゃないと。
「どうやら理菜にお客さんがきたみたいだぜ」
修也の視線の先には一華と晴翔がいた。
「それじゃあ俺は先に帰るよ。気をつけてな」
そう言って修也は先に帰ってしまった。
一華と視線を合わせる。うん、一華は修也のところに行ってきて。
一華は頷くと修也のあとを追いかけて行った。私と晴翔の二人がその場に残る。
晴翔が伏し目がちに私を見る。それだけで心臓がドキドキする。
私も晴翔もお互いに言葉が出そうで出てこない。二人の間を沈黙が流れる。
何か言わないと。でも何を言えばいいんだろう。
もじもじしていると先に晴翔が口を開いた。
「ごめんよ、遅くなって。もっと早くから来たかったんだけど部誌の製本作業がなかなか終わらなくて……」
「もう、見にきてくれないかと思ったじゃん!」
本当はこんなこと言うつもりじゃなかったのに。晴翔の声を聞いたら思っていたことが溢れてきちゃう。
「全然来ないから心配したじゃん。何かあったんじゃないかとか、今日の大会のこと忘れちゃったんじゃないかとか」
「遅くなりそうってメッセージは送ったけど」
「大会中はスマホは見ないようにしているの」
晴翔と話せて、見に来てくれてすごく嬉しいのにどうして素直に言えないんだろう。
「ごめん、私色々言いすぎたね。晴翔が私の番に間に合ってくれてよかった」
晴翔がホッとしたように笑う。
「俺も岩田の少林寺を見れてよかった。やっぱ岩田ってすごいよ」
ふと、自分の演武のことを思い出す。あの時は無我夢中でやってたけど、大きな声出したりしてたよね。あれ全部、晴翔に見られてたんだ。恥ずかしくて晴翔の顔が直視できない。
「あれ、何かあった?」
突然の変化に晴翔は戸惑ってしまった。
「なんか、演武を見られてたと思うと急に恥ずかしくなっちゃってさ」
もう、晴翔ったら笑い出してるよ。
「だって岩田が少林寺見にきてって言ったんだろ」
それはそうだけど。見てほしいけど、見られたら恥ずかしんだよう。
ぷーって頬を膨らます。その顔を見て晴翔は余計に笑う。
晴翔の笑顔ってすごく優しそう。こんなの見たら何も言えなくなっちゃうよ。
「少林寺をしている岩田はすごくかっこよかった。魔法の力で変身したみたい。小説に出てくる戦うヒロインって感じだった」
それって晴翔が書いた小説に出てくるヒロインだよね?もしかして私って晴翔のタイプなの?
きっと私の頬が赤くなっている。それを見て晴翔も急に恥ずかしそうに顔を背ける。
「いや、岩田の少林寺がすごくよかったって意味で他に別な意味とかはないよ」
私の考えすぎか。ちょっと残念。それにしては晴翔、すごい慌ててたね。
いつの間にか晴翔と自然に話せるようになっていた。晴翔は私のことどう思っているんだろう。私と話すようになって少しは意識をしてくれるようになったのかな。
一人、また一人と会場から人が出ていく。
「岩田も大会終わって疲れているよな。ごめんな、長々と話しちゃって」
ごめんじゃないよ。私は晴翔と話せてすごい嬉しいよ。そんなの直接言えないけど。
晴翔が帰ろうとする。それを見て席替えがあるのを思い出した。
席が離れたら晴翔と話せなくなっちゃうのかな。
せっかく晴翔と仲良くなれたと思ったのに。
そんなの嫌だ。もっと晴翔と話したい。
今日だって、もう少しだけでも晴翔と話したい。
「あのさ、晴翔って地下鉄だよね」
「そうだけど」
もう少しだけ晴翔と一緒にいたい。
今だったら言える気がする。
「乗り換えまで一緒に帰ってもいい?」
私は体全身が照れて赤くなっているのが自分でもわかった。