「ふうー、なんだか疲れた」
さっき席替えをしたと思ったらもう昼休みだ。
晴翔が近くにいると全然授業に集中できない。教科書をめくる音やペンでノートに文字を書く音が全部気になってしまう。
「理菜、どうしたの?なんだか顔が赤いよ」
お弁当を食べるために後ろに振り返った一華が私の顔を見るなり変なことを言う。嘘、私の顔赤くなっている?
「別に、何もないよ。今日、いつもより熱いんじゃないかな」
気温は知らないけど、私の体温は昨日より絶対に高い。
晴翔は相変わらず、黙々とお弁当を食べている。ちらっとしか見えないけど男子にしては細い二段のお弁当箱だ。私のよりも量は少ないんじゃないかな。
「一華っていつもお弁当可愛いよね。どこでそういうの覚えてるの?」
「私は、わかりんチャンネルを参考にしているかな」
わかりんチャンネルは若い女性に人気の動画配信チャンネルだ。元アイドルのわかりんが女子のモテ情報を動画で教えてくれている。私も名前はちらっと聞いたことがあるけど、動画は見たことない。
「お弁当以外にも、色々面白い動画があるから私はよく見てるよ」
可愛くなりたいと思ったら色々勉強したりしなきゃだよね。
晴翔と席が近くなったんだし、これってきっとチャンスだ。
弁当を食べ終えた晴翔は鞄から小説を出して読み始めた。
晴翔って本当に小説が好きなんだね。今度は何を読んでいるんだろう。
小説を読んでいる晴翔をこんなに近くで見たのは、あの時以来かな。
晴翔を好きになった瞬間をふいに思い出した。
晴翔を一目見たときからかっこいいと思っていた。昼休みになると教室に残っていつも本を読んでいるから本が好きって印象が強い。でも、ただそれだけ。
一華が部活の大会で学校を休んだ日。私は弁当を食べた後小説を読んでいた。
「その小説、俺も持っている」
一瞬、それが私に向けられた言葉だって気がつかなかった。ふと視線を上げると、晴翔が立っていた。今までで一番近い距離。晴翔の顔がすごく綺麗に見えた。
私が読んでいたのはすごくマイナーな小説家の本。この本を知っている人が私以外にもクラスにいるなんて思ってもいなかった。もう、なんだか、いろんなことがびっくり。
「え、あ、そうなんだ。へえ、よく知ってるね」
「そのシリーズ面白いよな」
そう言って晴翔が笑った。
「私も、この本好きだよ」
その瞬間、ドキドキしてた。急にかっこいい男子から話しかけられる。好きなものが共通している。それだけで運命に思えちゃった。
それから、私は晴翔のことを意識するようになった。気がつくと目で追っかけてしまう。
私は今でも、学校で読むつもりもないのに晴翔と話すきっかけになった小説をリュックの中にしまっている。
でも晴翔の一言がきっかけで好きになったのに、それ以来晴翔と話をしたことがない。
晴翔が今、どんな小説を読んでいるのか気になる。でも私から晴翔に話しかけるなんてそんなの恥ずかしくてできない。
目の前にいる一華のことが気になった。一華って女子力高いけど恋愛の話とか聞いたことない。一華はこんなに女子力が高いんだ。好きな人ができたらすぐに付き合っちゃったりするのかな。
「もう、また理菜ぼーっとしてる」
一華の言葉で我に返る。いけない、また晴翔のこと考えてぼーっとしてた。
「ごめんごめん。一華のお弁当可愛くて、見惚れてた」
「私のお弁当、もう半分も残ってないよ」
一華は困った私の顔を見てケラケラ笑う。綺麗にまとまったポニーテールが一華の笑顔に合わせて揺れている。
「理菜のそういう天然なところ、私は好きだよ」
一華と話せて、晴翔が近くにいて。私、今すごく楽しい。
もしかしてこれが青春ってやつ?私も小説のヒロインになった気分。
残りの高校生活もずっとこんな感じで続いていけばいいのにな。
席替え一日目の昼休みが終わる。午後の授業の後は部活だ。
よーし、もういっちょ頑張りますか。
「理菜、なんだか楽しそうだね」
自分でも顔がプクッとなっているのがわかる。私はすぐ、顔に出てしまうみたいだ。
さっき席替えをしたと思ったらもう昼休みだ。
晴翔が近くにいると全然授業に集中できない。教科書をめくる音やペンでノートに文字を書く音が全部気になってしまう。
「理菜、どうしたの?なんだか顔が赤いよ」
お弁当を食べるために後ろに振り返った一華が私の顔を見るなり変なことを言う。嘘、私の顔赤くなっている?
「別に、何もないよ。今日、いつもより熱いんじゃないかな」
気温は知らないけど、私の体温は昨日より絶対に高い。
晴翔は相変わらず、黙々とお弁当を食べている。ちらっとしか見えないけど男子にしては細い二段のお弁当箱だ。私のよりも量は少ないんじゃないかな。
「一華っていつもお弁当可愛いよね。どこでそういうの覚えてるの?」
「私は、わかりんチャンネルを参考にしているかな」
わかりんチャンネルは若い女性に人気の動画配信チャンネルだ。元アイドルのわかりんが女子のモテ情報を動画で教えてくれている。私も名前はちらっと聞いたことがあるけど、動画は見たことない。
「お弁当以外にも、色々面白い動画があるから私はよく見てるよ」
可愛くなりたいと思ったら色々勉強したりしなきゃだよね。
晴翔と席が近くなったんだし、これってきっとチャンスだ。
弁当を食べ終えた晴翔は鞄から小説を出して読み始めた。
晴翔って本当に小説が好きなんだね。今度は何を読んでいるんだろう。
小説を読んでいる晴翔をこんなに近くで見たのは、あの時以来かな。
晴翔を好きになった瞬間をふいに思い出した。
晴翔を一目見たときからかっこいいと思っていた。昼休みになると教室に残っていつも本を読んでいるから本が好きって印象が強い。でも、ただそれだけ。
一華が部活の大会で学校を休んだ日。私は弁当を食べた後小説を読んでいた。
「その小説、俺も持っている」
一瞬、それが私に向けられた言葉だって気がつかなかった。ふと視線を上げると、晴翔が立っていた。今までで一番近い距離。晴翔の顔がすごく綺麗に見えた。
私が読んでいたのはすごくマイナーな小説家の本。この本を知っている人が私以外にもクラスにいるなんて思ってもいなかった。もう、なんだか、いろんなことがびっくり。
「え、あ、そうなんだ。へえ、よく知ってるね」
「そのシリーズ面白いよな」
そう言って晴翔が笑った。
「私も、この本好きだよ」
その瞬間、ドキドキしてた。急にかっこいい男子から話しかけられる。好きなものが共通している。それだけで運命に思えちゃった。
それから、私は晴翔のことを意識するようになった。気がつくと目で追っかけてしまう。
私は今でも、学校で読むつもりもないのに晴翔と話すきっかけになった小説をリュックの中にしまっている。
でも晴翔の一言がきっかけで好きになったのに、それ以来晴翔と話をしたことがない。
晴翔が今、どんな小説を読んでいるのか気になる。でも私から晴翔に話しかけるなんてそんなの恥ずかしくてできない。
目の前にいる一華のことが気になった。一華って女子力高いけど恋愛の話とか聞いたことない。一華はこんなに女子力が高いんだ。好きな人ができたらすぐに付き合っちゃったりするのかな。
「もう、また理菜ぼーっとしてる」
一華の言葉で我に返る。いけない、また晴翔のこと考えてぼーっとしてた。
「ごめんごめん。一華のお弁当可愛くて、見惚れてた」
「私のお弁当、もう半分も残ってないよ」
一華は困った私の顔を見てケラケラ笑う。綺麗にまとまったポニーテールが一華の笑顔に合わせて揺れている。
「理菜のそういう天然なところ、私は好きだよ」
一華と話せて、晴翔が近くにいて。私、今すごく楽しい。
もしかしてこれが青春ってやつ?私も小説のヒロインになった気分。
残りの高校生活もずっとこんな感じで続いていけばいいのにな。
席替え一日目の昼休みが終わる。午後の授業の後は部活だ。
よーし、もういっちょ頑張りますか。
「理菜、なんだか楽しそうだね」
自分でも顔がプクッとなっているのがわかる。私はすぐ、顔に出てしまうみたいだ。