ついにこの日がきた。少林寺の新人戦が始まる。
今回の会場も北光学院高校。模擬試合と同じで九時に現地集合だ。
修也と一緒に地下鉄に乗って二人で座る。何だか修也の顔がいつもより硬い。
「もしかして修也、緊張している?」
「そういう理菜だって緊張してるだろ」
今日の試合の結果で、春の全国大会に行けるかどうかが決まる。私は勝ちたい。勝つために今まで練習してきたんだから。
乗り換えもスムーズで八時四十分には目的の学院前駅に着いた。
どれだけ練習をしても不安は消えない。あとはもう、自分の全力を出すだけだ。
競技人口が決して多い競技ではない。でもだからと言って簡単に勝てるほど甘いものではない。でも私だって前の私とは違うもんね。
ぞろぞろと格技場に道着を着た選手が集まってくる。この北の大地で少林寺に青春を捧げる人たちが一ヶ所に集まる光景は、何度見ても胸が熱くなる。
「これより北海道高等学校少林寺拳法新人大会兼全国高等学校少林寺拳法選抜大会北海道予選会を行います」
大会のスケジュールを確認する。模擬試合と同様に男女が別々のコートで同時に進行する。その中で私と修也の出る単独演武は最後のプログラムだ。
私の出番が始まるのはお昼過ぎ。体が勝手にソワソワする。すごく不安だけど、他の人の演武を見ていると早く体を動かしたくなってしまう。
目を閉じて自分の演武を何度もシミュレーションする。構成の順番や繋ぎ、一つ一つの自分の動き。鏡で見た自分の姿や録画した姿も思い出す。私はできる。そう心の中で何度も唱える。
北丘高校の女子は模擬試合と同じで組演武が二組、単独演武が二人の出場。もちろん単独演武に出るのは私と蘭先輩だ。
全国大会に進めるのは各種目二位まで。私と蘭先輩で全国大会に進出できる可能性だってある。
今回の大会も道内の三強と言われる、北丘、北光学院、富良野東の間で激しい戦いになりそうだ。
でもどんな演武をしてこようが関係ない。私は私の演武をするだけだ。
気持ちを落ち着けるため、一人で廊下に出た。設備の整った私立高校でも、冬になれば廊下はやっぱり寒い。
行き交う道着を着た女子がチラチラと私を見てくる。刺さる視線が少し痛い。落ち着こう。私の演武はこれからだ。
「理菜」
「一華、もう来てたんだ」
「やっぱり理菜は道着が似合ってるね」
いつものようにケラケラと一華が笑う。
「理菜の出番はもうちょっと後?」
「うん。しかも今回もまた出番が最後なんだよね」
「うわ、そうなんだ」
順番はくじ引きで決めた。なのにまた私が最後になる。
「あれ、一華ちゃんも来てたんだ」
修也まで来ちゃった。この三人で集まるとなんだか別な意味で緊張。
「うん、理菜の応援に来たよ」
「理菜のことはいいから、俺の応援してくれよ」
「えー、どうしようかな」
「ちょっと、私から一華のこと取らないでよ」
私の知らないところで一華と修也が仲良くなっている。嬉しいんだけど、なんだかちょっと寂しい気分。
「じゃ、俺そろそろアップしてくるわ」
「あ、私もしとこうかな。蘭先輩も呼んでくる」
「わかった。先ちょっと始めとくわ」
そう言って修也が先にアップを始めに行った。
「ねえ、晴翔のこと見なかった?」
「うーん、まだ見てないな」
まだ来てないのか。でも私の出番までまだ時間はある。
「それじゃ、また後で。頑張ってね、理菜」
晴翔、ちゃんと来てくれるかな。もしかして来る途中で何かの事故に巻き込まれていないよね。
スマホはリュックに入れたままだ。だけど晴翔は大丈夫。きっと見に来てくれる。
今は自分のことに集中しないと。私のことを応援してくれる人はたくさんいる。私は一人じゃない。だから私は頑張れるんだ。
歓声の聞こえる格技場に蘭先輩を呼びに私はまた戻りに行った。
今回の会場も北光学院高校。模擬試合と同じで九時に現地集合だ。
修也と一緒に地下鉄に乗って二人で座る。何だか修也の顔がいつもより硬い。
「もしかして修也、緊張している?」
「そういう理菜だって緊張してるだろ」
今日の試合の結果で、春の全国大会に行けるかどうかが決まる。私は勝ちたい。勝つために今まで練習してきたんだから。
乗り換えもスムーズで八時四十分には目的の学院前駅に着いた。
どれだけ練習をしても不安は消えない。あとはもう、自分の全力を出すだけだ。
競技人口が決して多い競技ではない。でもだからと言って簡単に勝てるほど甘いものではない。でも私だって前の私とは違うもんね。
ぞろぞろと格技場に道着を着た選手が集まってくる。この北の大地で少林寺に青春を捧げる人たちが一ヶ所に集まる光景は、何度見ても胸が熱くなる。
「これより北海道高等学校少林寺拳法新人大会兼全国高等学校少林寺拳法選抜大会北海道予選会を行います」
大会のスケジュールを確認する。模擬試合と同様に男女が別々のコートで同時に進行する。その中で私と修也の出る単独演武は最後のプログラムだ。
私の出番が始まるのはお昼過ぎ。体が勝手にソワソワする。すごく不安だけど、他の人の演武を見ていると早く体を動かしたくなってしまう。
目を閉じて自分の演武を何度もシミュレーションする。構成の順番や繋ぎ、一つ一つの自分の動き。鏡で見た自分の姿や録画した姿も思い出す。私はできる。そう心の中で何度も唱える。
北丘高校の女子は模擬試合と同じで組演武が二組、単独演武が二人の出場。もちろん単独演武に出るのは私と蘭先輩だ。
全国大会に進めるのは各種目二位まで。私と蘭先輩で全国大会に進出できる可能性だってある。
今回の大会も道内の三強と言われる、北丘、北光学院、富良野東の間で激しい戦いになりそうだ。
でもどんな演武をしてこようが関係ない。私は私の演武をするだけだ。
気持ちを落ち着けるため、一人で廊下に出た。設備の整った私立高校でも、冬になれば廊下はやっぱり寒い。
行き交う道着を着た女子がチラチラと私を見てくる。刺さる視線が少し痛い。落ち着こう。私の演武はこれからだ。
「理菜」
「一華、もう来てたんだ」
「やっぱり理菜は道着が似合ってるね」
いつものようにケラケラと一華が笑う。
「理菜の出番はもうちょっと後?」
「うん。しかも今回もまた出番が最後なんだよね」
「うわ、そうなんだ」
順番はくじ引きで決めた。なのにまた私が最後になる。
「あれ、一華ちゃんも来てたんだ」
修也まで来ちゃった。この三人で集まるとなんだか別な意味で緊張。
「うん、理菜の応援に来たよ」
「理菜のことはいいから、俺の応援してくれよ」
「えー、どうしようかな」
「ちょっと、私から一華のこと取らないでよ」
私の知らないところで一華と修也が仲良くなっている。嬉しいんだけど、なんだかちょっと寂しい気分。
「じゃ、俺そろそろアップしてくるわ」
「あ、私もしとこうかな。蘭先輩も呼んでくる」
「わかった。先ちょっと始めとくわ」
そう言って修也が先にアップを始めに行った。
「ねえ、晴翔のこと見なかった?」
「うーん、まだ見てないな」
まだ来てないのか。でも私の出番までまだ時間はある。
「それじゃ、また後で。頑張ってね、理菜」
晴翔、ちゃんと来てくれるかな。もしかして来る途中で何かの事故に巻き込まれていないよね。
スマホはリュックに入れたままだ。だけど晴翔は大丈夫。きっと見に来てくれる。
今は自分のことに集中しないと。私のことを応援してくれる人はたくさんいる。私は一人じゃない。だから私は頑張れるんだ。
歓声の聞こえる格技場に蘭先輩を呼びに私はまた戻りに行った。