慌ててパッと目が覚めて、スマホを確認する。やばいもうすぐ七時半だ。

昨日は晴翔と一緒に帰ったあと、道場に行って二時間くらい練習をした。くたくたの状態で家に帰り、すぐにシャワーを浴びてご飯を食べる。ベッドに横になって借りてきた小説を読んでいたらいつの間にか寝てしまった。

ご飯をぱぱっと食べて、寝癖を治し、ヘアオイルをつける。どんなに忙しくてもこれだけはするって決めたんだ。

教室に滑り込む。今日はギリギリセーフ。反射みたいにすぐに晴翔の方を見る。一瞬、晴翔と目が合った気がした。

もしかして、晴翔も私の方をチラッと見た?

昨日の帰りのことを思い出す。晴翔と二人で話ができた。思い出しただけでニヤニヤしちゃいそう。

速水先生が教室に入ってくる。

「今日はみんなにお知らせがある」

担任の速水先生がクラスのことを話すのは滅多にない。席替えをしたりとかそれくらいのはず。あれ、まさか……。

「冬休みの前に席替えをしようと思う」

クラス中がわーっと騒ぎ出す。席替えは数少ないクラスでのイベント。みんな席替えをするのが楽しみなのだ。

だけど私はそうじゃない。晴翔と一華が近くにいる。これ以上の席なんてないよ。

「席替えは十二月の三週目の月曜日にしようと思う」

私の大会が終わってすぐだ。

「思ったよりも席替えのタイミング早かったね」

「うん、私、この席好きだったから残念だな」

「ま、しばらくはこの席なんだし心配するよりも今を楽しもうよ」

「そうだね」

「それに、席が離れても私たちの関係は変わらないよ」

一華がニッと笑うとすぐに前に向き直った。私のことを心配してくれたのかな。それに一華の言う通りだ。席が替わることを心配しても仕方ない。今、この瞬間を大事にしよう。

晴翔の後ろ姿をポーッと眺めた。好きな人を近くで眺める。今の私にはこの瞬間がすごく幸せだ。