「ねえ、瀬菜」

家に帰ると、すぐに瀬菜のところに駆けて行った。もちろん、目的は決まっている。

「なーに、お姉ちゃん?」

「あのさ、一冊本を貸してほしいんだけど」
瀬菜と私はそれぞれが自分の本を持っている。今回もすぐに貸してもらえると思ってたのに。

「どうしようかな」

瀬菜の答えに私はびっくりした。

「えー、いいじゃん本くらい」

「じゃあ、交換条件っていうのはどう?」

「いいよ、瀬菜も何か貸してほしいの?」

「お姉ちゃんのシャンプー、私にも使わせて」

瀬菜はそう言ってニヤリと笑った。この子、ずっと私のシャンプーを狙っていたのか。私の弱みを見つけたと思うとすぐに交渉をする。恐るべき小学五年生だ。

「もう、今日だけだからね」

「それじゃ少ない。本借りている期間ずっと」
 
この子、私よりも何枚も上手だ。私が断らないのをわかっているな……。

「わかった。いいよ」
「ありがとう」
 
そう言って瀬菜は晴翔が今日読んでいた本と同じ本を私に渡してくれた。

うん、これこれ。本を見ただけで体がソワソワしちゃう。

「じゃ、私シャワー浴びてきます」
 
瀬菜はスキップしながら部屋を出て行った。あのシャンプー使えるのがよっぽど嬉しいんだね。

私は自分の部屋に戻るとすぐに本を開いた。