「お前、人間だろ」



集めたプリントを職員室に提出ようと、人気のない階段を上っていたところ。



急に背後からささやかれたその声に、私はぴたりと立ち止まってしまった。



「……えっ?」



こわごわと後ろを振り返ると、背の高い男の子の姿が私をじっと、射抜くように見つめている。



冬の月の光みたいな白銀(はくぎん)色の髪に、透き通った琥珀(こはく)色の瞳。



制服は少し着崩していて、首元に結ばれたネクタイは、私と同じ2年生の学年色である赤色をしている。



なんだか不良っぽい印象を覚える整った顔立ちをした彼は、何か不満でも抱えているかのように口を真一文字に結んでいる。



「あの、えっと……。ちょっと、何言ってるのかよくわかんないんだけど……」



引きつった顔の筋肉をなんとか動かして笑顔を作ってみせるものの、男の子はそんな私を「とぼけんな」と一蹴する。