一方、人間の生徒は私一人だけ。



まだこの学園に来て日が浅いから、最近の魔族のことはあまり詳しく知らないけれど……もしかしたら、昔からの良い伝えや民話のように、人間を食べたり利用したりする種族の生徒もいるかもしれない。



というわけで、もしものことを考えて。



今は持ち前の存在感の薄さを利用して、『透明人間』と周りに嘘をついて暮らしている。



ちなみに、この十六夜学園に転校して知ったことだけど、どうやら透明人間っていうのは希少魔族という、魔族の中でもかなりレアな種族なんだって。



『透山さんって、透明人間みたいだよね』



ほんの数ヶ月前。



前の学校で『透明人間』と呼ばれる時は、決まっていつも聞えよがしに陰口を叩かれる時だったからものすごく嫌だったけど、今は全然気にならない。



いつかこの嘘が誰か一人にでもバレたらどうしようってハラハラしない日はないけど。



何はともかく、卒業まであと1年と半年。



このまま透明人間として、この十六夜学園で平和に過ごしていけたらいいなぁ……。



なんて、思っていたのも束の間。