いくらすぐに寮付きの学校を探さなきゃいけなくなったとはいえ、ちゃんと調べていたら、こんなことにはならなかった。



月神くんと出会うこともなかったし、残り1年半もある高校生活を魔族に囲まれて、『透明人間』と自分を偽る必要もなかった。



大きなトラブルも、後ろめたい隠し事をする必要のない楽しい学校生活を、手放しで送れたかもしれなかったのに――……。




後悔とやるせなさに泣きそうになるのをこらえるように、唇をきゅっと噛みしめて廊下を走っていたその時。



「あっ……!」



急につま先が何かにガッとぶつかって、私は勢いよく床の上にダイブしてしまった。



「いったあ……」



うつ伏せの状態でズキズキとした痛みに顔を歪めていると、



背後から「はぁ……、それはこっちの台詞なんだけど……」と、けだるそうに文句を言う声が聞こえて、心臓がドキッと跳ねる。