「ごめん。ホームルームが長引いちゃって……、待った?」



――1週間後の放課後。



がらんとした空き教室の窓際の一番後ろの席に座っていると、黒板近くのドアが開いて、人が入ってきた。



「ううん。大丈夫だよ、科野くん」



「そっか。で、僕にお願いがあるって、何をして欲しいの?」



私が座る1つ前の席に腰を下ろすなり、科野くんは真剣な顔で聞いてくる。



頼みたいことはもう決まってる。しかも、それは科野くんじゃないと叶えられないことだ。



「お願い。科野くんの魔法で、私の中にある月神くんの記憶を全部消して欲しいの」



「え? それって、どういう……?」



片眉を上げて首をかしげる科野くんに、私は転校のことや、月神くんへの恋を諦めたい話を打ち明けた。



話し終わると、科野くんは「なるほどね……」と納得したようにうなずいた。