それに、彼女の真剣な口ぶりから、月神くんに抱いているまっすぐな恋心が伝わってきて、自分自身が情けなくなった。
いくら秘密を守ってもらうためだとしても。
月神くんとの交換条件で彼女のフリをしている私の行動は、本気の恋をしている灰瀬さんからするとかなり失礼極まりない。
申しわけなさ過ぎて、本当に透明になって消えてしまいたいぐらい。
「もう今日(ハロウィン)も終わったことだし、次からはどういった行動を取ればいいか、考えなくてもわかるよね」
灰瀬さんは念押しするように言うと、颯爽とこの場を立ち去ってしまった。
残された私は、一人ぽつんとソファに座ったまま、ひざの上に置いた両手をぎゅっと強く握り締める。
こうでもしないと、号泣しそうだった。今更だけど、自覚してしまったから。
月神くんのことが好きなんだって――……。