ようやく会うことの出来たジュストは、明日(みょうにち)城で開かれる夜会に行く理由を『クランシー侯爵夫人と仲良くなり意気投合し、彼女の友人を紹介して貰うため』とするようにと私へ指示を出した。

「それは……どうして?」

 クインシー侯爵夫人ミランダ様は、有名な方なので知ってはいるけれど、もちろん私が一方的に知っているだけだ。今日、主催者なのでご挨拶もしたけれど、彼女の記憶に私が残っているかどうかはわからない。

「はい……そうすれば、サラクラン伯爵は、何も言えません。クインシー侯爵夫人ミランダ様は、王妃様の幼馴染でお気に入りのご友人。そんな方に気に入っていただければ、ミシェルお嬢様の社交界での地位は磐石になるだろうと思われるはずです」

「ああ……お父様は、それならば何も言わないでしょうね」

「ですから、お嬢様が少々何か緊張されていても、上位貴族夫人に紹介して貰えるのならと、それは仕方ないと思って頂けるはずですし」

 ジュストは私と離れていた短い間に、何もかも準備していたと言っていたけれど、私はそれでもなんだか不安なのだ。

 だって、ジュストは私にすべてを言ってはくれない。