「ええ。言ったでしょう。僕にとっては、これからは絶対に失敗出来ないことですので、不安要素をすべて排除してしまいたいんですよ」

「わかったわ。私、ジュストのこと……信じているから」

 そう言えば、彼は慎重に周囲を見回して、私のことを抱きしめた。

「光栄です。お嬢様。僕は貴女を失う訳にはいきませんので……すべてを今ここで話す訳にはいかず、申し訳ありません」

 安心出来るジュストの腕の中で、私は彼のことが本当に好きなのだと再確認する。

 婚約しているラザール様には申し訳ないけれど、彼の納得がいくような理由で早く婚約解消すべきとも。

「……いつまで、お嬢様なの? ジュスト。貴方はもう、サラクラン伯爵邸に雇われていないようだけど」

 私を『お嬢様』と呼ぶのは、サラクラン伯爵家のものだけだ。公式にはサラクラン伯爵令嬢と呼ばれるだろうし、その時にも名前に敬称が付くくらいの話だろう。

 ジュストはお父様が解雇してしまったし、サラクラン伯爵家との雇用関係は切れている。

 だから、今ここに居るのは貴族の身分を持つ、ただの男女二人なのだ。