彼も私がひどく落ち込んで涙目になっている様子を見て『これは関わらない方が良い』と判断したのか、神妙な顔で頷いて元の位置に戻っていた。

 別に護衛騎士なんて居なくても……クインシー侯爵家は力ある貴族だし警備の数も多くて、私が庭園をうろうろしていても別に危険なんてないわよ……そんな時でもジュストは、私の傍を離れなかったけど……ジュストではないし……。

 私は人気のない庭園のベンチに腰掛けて、目の端に付いていた涙を拭った。

「ジュストの馬鹿……ジュストの嘘つき。本当に、ひどい人……」

 今日、久しぶりに会えると思っていたから、気分の上下の落差が開きすぎていて、どうしても落胆していしまう気持ちは隠せなかった。

 私はジュストに会いたかったのに、こんなにも会いたかったのに……会えないんだ。

 頬に流れ落ちる涙を拭っていた私は、誰かにハンカチを渡されて、何気なく見上げて息が止まりそうになった。

「お嬢様は僕が居ないと駄目な、仕方ない人ですね。そんなに、会いたかったんですか?」

 私が良く見ていた護衛騎士ではない紳士の恰好をしたジュストは、軽い動作で私の隣に座りいつものようににっこりと可愛らしい顔で微笑んだ。

「どっ……どうして?」

 さっき、私は彼の義母に『今日はジュストは来ない』と、聞いたばかりなのに。

「いえ。こうでもしないと、ミシェルお嬢様の護衛騎士は居なくならないでしょう。すみません。僕が来ないと義母は言いましたけど、この通りあれは嘘です」

 久しぶりに会ったジュストは、いつも通り『全部僕の計算通りです』みたいな涼しい顔をして肩を竦めた。