『拝啓 愛しいミシェルお嬢様

そろそろ常に傍近くに仕えていた僕が恋しくて、枕を涙で濡らしていらっしゃる頃合いだと思います。

 何故、僕があの時何も言わずに去ったかと言うと、ミシェルお嬢様は正直で嘘を付けずに、隠し事があると挙動不審になってしまうとても、とてもお可愛らしい一面があるため、こちらの準備がすべて整うまで何も言わずにいたことをどうかお許し下さい。』

 私はそこまで読んで、笑ってしまいながらも、涙が出そうになってしまった。

 これは絶対にラザール様が用意した、偽の手紙ではないわ。

 加減が絶妙で、これを読んだ私がムカっと苛立ったとしても、すぐにその後の誉め言葉で取り戻せる程度の嫌味……絶対に、あのジュストが書いたものよ。間違いないわ。

 やはりお母様も言っていた通り、ちゃんと連絡出来る方法を確保していたからこそ、ジュストはサラクラン伯爵邸を出て行く時に、あの余裕を見せていたのだ。

『ああ。お嬢様のそういうところも、僕はとても好きなんです。誤解なさらぬように。本当に可愛いですよね。一刻も早くお会いしたいです。

僕もミシェルお嬢様の傍を離れる時は、耐えがたいほどに寂しい思いを味わいました。しかし、ようやく色々と準備が整いましたので、この手紙でお知らせいたします。