「……君には、本当にがっかりしたよ。ミシェル。だが、貴族の責務として、ミシェルとの婚約は解消しない。僕は君と結婚する。良いね?」

 この話をされると思い覚悟をしていた私は『やっぱり来た』と心の中で思い、こう来たらこう言おうと考えていた言葉で切り返すことにした。

「……ええ。がっかりさせてしまって、本当に申し訳ありません。けれど、別の方と結婚したいと望んだことを責められるであれば、私たちは同じ罪を犯したのではないかと思うのですが?」

 これは私本人にはまだ知られていないと思っていたのか、ラザール様は優雅に呑んでいたお茶を吹き出しナプキンで拭った。

 熱かったでしょうね。良い気味よ。

 私は澄ましてお茶に口を付け、しばしの沈黙が流れた。

「君は……あの護衛騎士に、話し方が良く似ているな」

 それは、嫌味のつもりで言ったんだろうけど、ジュストのことが好きな私にとって、それは誉め言葉よ。

「長い間、私たちは近い距離で過ごしていたので、そう思われても、何もおかしくありませんわね……」